鶏肉の生食は危険です!
[2025/07/15] 胃腸科
みなさん、こんにちは。横浜市胃腸科のららぽーと横浜クリニックです。
毎日暑い日が続いていますね。体調には気を付けて暑い夏を乗り切っていきましょう。
さて、夏の怖い病気の一つと言えば・・・「食中毒」ですね。
「食中毒」と聞いて、みなさんは何を思い浮かべますか?
ノロウイルス、腸炎ビブリオ、サルモネラ属菌など・・・、さまざまな種類がありますよね。
その中でも、食中毒全体の約20%を占めるのが「カンピロバクター」です。
今回は、このカンピロバクターについて詳しくご紹介します。
食中毒は夏だけではありません!
皆さんは「食中毒」と聞いて思い浮かべる季節はいつですか?
なんとなく「夏」と答える人も多いかもしれません。
実は、食中毒自体は年間を通して発生しています。
食中毒の主な原因は、細菌、ウイルス、寄生虫で、このほかにも自然毒(きのこや野草、フグなどに含まれる天然の毒)、化学物質による食中毒も発生しています。
食べ物が悪くなってしまって具合が悪くなってしまう、というイメージの強い食中毒ですが、原因は様々であるため、それぞれに応じた食中毒予防が大切です。
さて、色々種類がある中で、今回のテーマである「カンピロバクター」はどれに当てはまるのでしょうか?
・・・正解は、「細菌」に含まれます。
なんとカンピロバクターは、細菌性食中毒の中でも毎年全体の20〜40%を占めています。
細菌性食中毒のトップであるカンピロバクターは一体どんな菌なのでしょうか。
カンピロバクターとは?
カンピロバクターとは、鶏・牛・豚などの腸管内に生息する細菌の一種です。
カンピロバクターは、人間や動物の腸管内でしか増殖せず、通常の加熱調理で死滅するなどの特性を持っています。
動物自身はこの細菌に感染しても症状が出ることはほとんどありませんが、数百個程度という比較的少ない菌量で人間に感染し、腸炎を引き起こします。
人間への感染経路は以下のようなものが挙げられます。
- 加熱不足の鶏肉やレバー(鶏・豚)を食べた場合
- 井戸水や川の水など、細菌で汚染された飲料水を飲んだ場合
- 犬や猫の糞便に触れることでの二次感染
特に日本では、鶏肉の刺身やたたき、加熱不足の焼き鳥やバーベキューなどでの感染が多数報告されています。
飲食店で提供される場合、「生で提供できるくらい新鮮な鶏肉だから大丈夫」と思われるかもしれませんが、「新鮮だから安全」というわけではありません!
新鮮な鶏肉でもカンピロバクターが存在している可能性があります。
なんと、食鳥処理(食用に処理すること)後の鶏肉のカンピロバクター汚染率は67.4%です!(厚生労働科学研究報告「食品製造の高度衛生管理に関する研究」)
カンピロバクターと同じ細菌性食中毒であるウェルシュ菌は、発症に数100万個以上の菌量が必要とされています。
それに対し、カンピロバクターはなんと数百個程度で発症してしまうのですから驚きです。
では、カンピロバクターに感染するとどんな症状が出るのでしょうか。
感染するとどんな症状が出るの?
実はカンピロバクターに感染しても、すぐに症状が出るわけではありません。
潜伏期間は1〜7日間、時には10日近くかかることもあるほどやや長いことが特徴です。
これは他の食中毒に比べて長めの特徴です。
- 38℃前後の発熱
- 強い倦怠感や頭痛
- 吐き気や嘔吐
- 激しい腹痛
- 水のような下痢(1日10回以上になることも)
- ときに血便
など、他の細菌性食中毒と同様の症状が出現します。
多くの場合は、症状は1~3日程度で回復していき、1週間程度で治癒します。
死亡例や重篤例はまれですが、乳幼児や高齢者、体力の落ちている方は重症化することがあるため、注意が必要です。
また、カンピロバクターに感染した数週間後に、手足の麻痺や顔面神経麻痺、呼吸困難などを起こす、ギラン・バレー症候群という神経の病気を引き起こすことがあります。
カンピロバクターに感染し、症状に苦しむだけでなく、その後に神経の病気を引き起こす可能性もあるなんて怖いですよね。
では、どうやってカンピロバクターの感染を防いでいけばよいのでしょうか。
感染を防ぐためには?
カンピロバクターは冷蔵庫や冷凍庫でも生き続けることができ、家庭の保存環境では死滅させることは難しいです。
しかし、熱には弱いため、正しい調理を心がければ感染を予防することが可能です。
感染予防のポイントは『菌を付けない・菌を増やさない・菌をやっつける』ことです!
具体的にいうと・・・
- 食肉は生や半生で食べない(必ず75℃以上で1分以上の加熱で死滅します!)
- 調理器具はしっかり洗浄・消毒し、乾燥させる(熱と乾燥に弱いです!)
- 肉と野菜・果物は別々に保存し、調理の際もまな板や包丁を分ける
- 手洗いを徹底する(特に生肉を触った後やペットの世話をした後)
- 外食の時は食べる前に加熱されているかチェックする
どうですか?どれも少し気を付けるだけで簡単にできるものばかりです。
「ちょっとくらい大丈夫だろう」という、気のゆるみが感染に繋がってしまいます。
自分のためにも、一緒に食べる誰かのためにも、きちんと感染予防を行っていきましょう!
◎最後に
いかがでしたか?
カンピロバクターは決して珍しい細菌ではなく、私たちの身近に存在しています。
近年は、牛肉からより安価な豚肉、鶏肉への需要がシフトしており、健康志向の高まりから、鶏肉の消費量が上昇傾向にあるそうです。
鶏肉は、私たちの生活と切り離せず手にする機会が多いからこそ、「カンピロバクター感染予防のために少しのことに気を付ける」ことはとても大切です。
毎日の習慣に「しっかり加熱」「器具の消毒」「きちんと手洗い」を取り入れるだけで、感染のリスクはぐっと下がります。
少しのことだからこそ、面倒に感じるかもしれませんが、その小さな工夫がご自身やご家族の健康を守ります。
当院でも、カンピロバクターが疑われる患者さんが受診されるケースはあります。
では今後鶏肉を食べることが危ないかと言われると、そんなことは全くありません!
「鶏肉の生食、または半生状態で食べてしまうと、カンピロバクターに感染する可能性がある」ことをきちんと知る、ということが大切です。
正しい知識を持って調理、食事を行えば過度に恐れる必要はありません。
これからも、安心して食事を楽しむためにも、是非今日から意識してみてくださいね。