胃マルト(MALT)リンパ腫はどんな病気?

印刷用ページ[2023/06/01] 胃腸科
みなさん、こんにちは。横浜市胃腸科のららぽーと横浜クリニックです。
みなさんは「リンパ腫」という言葉を聞いたことはありますか?
何となく、''悪いもの"というイメージを想像される方も多いのではないでしょうか。
それは、悪性リンパ腫というワードを耳にすることがあるからかもしれません。
リンパ腫にも発生部位や形態、性質によってたくさんの種類があります。
その中でも、本日は『胃マルト(MALT)リンパ腫』についてお話していきたいと思います。

 

そもそも、悪性リンパ腫とは?

私たちの体を流れる血液には、赤血球、血小板、白血球という細胞が含まれています。
このうち白血球は、感染や異物(がん細胞など)から体を守る免疫システムを構成しています。
リンパ球は、白血球の一部で、更にB細胞(Bリンパ球)、T細胞(Tリンパ腫)、NK(ナチュラルキラー)細胞等に分類することができます。
悪性リンパ腫は、こうしたリンパ球ががん化する病気です。

悪性リンパ腫は、がん細胞の形態や性質によって、大きくB細胞リンパ腫、T/NK細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫に分かれます。ここからさらに細かく分けられ、100種類近くのタイプがあります。
では、今回のメインである『マルトリンパ腫』はどれに分類されるのでしょうか。 


マルトリンパ腫ってなに?

白血球の中のリンパ球のうち、マルトリンパ腫は、Bリンパ球ががん化する病気です。
マルトリンパ腫は、消化管・扁桃・肺・甲状腺・唾液腺などに生じます。
消化管が最も多く約半数を占め、そのうち85%は胃に発症します。
全悪性リンパ腫に占める比率は7~8%と言われています。

マルトリンパ腫は、一般に良性の経過をたどります。
しかし、時に大細胞型びまん性リンパ腫という悪性リンパ腫へと移行することがあります。
また、胃のリンパ腫はマルトリンパ腫も含めて、胃がんに比べて非常に珍しい病気です。

本来、胃の粘膜にはリンパ組織はありません。
胃のリンパ濾胞(ろほう:体の組織である卵巣、甲状腺、下垂体などの内分泌腺にある完全に閉じた袋状の構造物)のことをMALT(マルト)といいます。
刺激に対する免疫反応として、新たにリンパ組織が形成されたと考えられています。

胃にマルトリンパ腫が発生してしまう原因とは、一体どんなものなのでしょうか。

 

胃マルトリンパ腫の原因

胃のマルトリンパ腫に関しては、ヘリコバクター・ピロリ菌に感染している場合が、約80%と高いという特徴があります。
一方、残りの20%の原因については、その約半数はAP12MALT1という遺伝子の異常が原因であることがわかっていますが、この遺伝子異常がどうして生じるかは、よくわかっていません。

胃以外の唾液腺や甲状腺に発生するものは、シェーグレン症候群や橋本病といった自己免疫性疾患による、慢性炎症が発生の機序であると考えられています。
次に、マルトリンパ腫になってしまったときには、どのような症状が出るのでしょうか。

 

胃マルトリンパ腫の症状

マルトリンパ腫は発症しても経過が穏やかに進行するため、症状が現れないケースが多いです。
胃マルトリンパ腫の場合においても無症状のまま過ごし、検診で偶然発見されるケースが多いとされています。

まれに症状が現れるケースでは、腹痛、腹部の不快感、吐血、全身のだるさなどが挙げられます。
胃マルトリンパ腫は、ピロリ菌に感染しているケースが非常に多いですが、ピロリ菌に感染していても初期の場合、それによる特徴的な自覚症状はほとんどありません
ただ、ピロリ菌感染を放置しておくと、胃マルトリンパ腫以外にも胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎、胃がんなどを引き起こす場合があり、これらの病気から胃のむかつき、胃の痛み、吐き気などの症状が現れる場合があります。
では、マルトリンパ腫が見つかった場合、どのように治療をしていくのでしょうか。

 

胃マルトリンパ腫の治療方法

マルトリンパ腫の治療は、胃と胃以外の臓器で大きく異なり、さらに、がんのステージによっても異なります。
胃マルトリンパ腫では、約90%の患者でピロリ菌感染が認められるため、ヘリコバクター・ピロリの検査を行います

・ピロリ菌が陽性の場合

1週間の除菌療法(抗生剤の内服)を行います。ピロリ菌の除菌療法は約90%の人が除菌に成功し、そのうちの約80-90%の人はマルトリンパ腫が治ります。
ピロリ菌を胃から除去することによって胃マルトリンパ腫になる確率を減らすこともできます。
除菌を行っても治らない場合や逆に進行する場合、悪性リンパ腫になってしまった場合は、放射線療法や薬物療法、外科的手術(胃切除)の対象になります。
多くの場合、これらで十分な治療効果が得られます。

・ピロリ菌が陰性の場合

遺伝子の検査を行います。
遺伝子検査でAPI2MALT1遺伝子異常が陽性の場合は、ヘリコバクター・ピロリ除菌療法は無効のため、原則的に射線療法や薬物投与、手術を行います。
ただし、この遺伝子異常がある場合は、逆に悪性リンパ腫へと進行しにくいともいわれているため、場合によって治療は行わずに経過観察の場合もあります。

 

最後に…

いかがでしたか?
マルトリンパ腫の発症部位は消化管、扁桃、肺、甲状腺などですが、その半数は消化管に多く、消化管の中でも85%は胃に集中します。
胃マルトリンパ腫は自覚症状があまりないため、健康診断などで偶然見つかることが多いです。
原因は主にピロリ菌であるため、除菌に成功した約80-90%の人は胃マルトリンパ腫が完治します。

ピロリ菌が陽性である場合、ピロリ菌が陰性の人に比べて胃がんの発生率が高くなるなど、胃マルトリンパ腫以外にも注意すべき病気が存在します。
だからこそ、胃内視鏡検査を受けて粘膜を直接観察すること、ピロリ菌の有無を確認することの大切さを分かって頂けたかと思います。
胃の病気は進行のスピードも速いとされていますので、1年に1回は胃内視鏡を受けて早期発見・早期治療をしていくことが大切です。


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