咳の原因は風邪だけではない?~食道炎と咳~
皆さんは咳が長引いてるな~と感じることはあるでしょうか。
「風邪を引いた後から咳が続いている」、「いつの間にか咳が出るようになってなかなか止まらない」…などなど、人によって症状は様々です。
7/1の記事(長引く咳にはご用心)では、長引く咳にはいくつかの病気が考えられるとお話をしました。
7/1の記事では挙げていない、長く咳が続くことのある病気があるのですが、皆さんは分かりますか?
実は、消化器の病気が関係している場合があるのです。
・・・・意外ですよね?その病気とは逆流性食道炎です。今回は咳と逆流性食道炎の関係についてお話します。
逆流性食道炎とは?
長引く咳の原因として考えられる病気は数多くありますが、見落とされやすいのに比較的多いのが、逆流性食道炎です。
口から入った食べ物は食道を通り、胃に送られます。胃で消化された食べ物は十二指腸を通り最終的に排便として体から出ていきます。
「胃も食道も同じようなものでしょ?」と思われるかもしれませんね。食べ物の通り道としては同じかもしれませんが、別の消化器官です。
胃では粘膜が胃酸に耐えられるように粘液の分泌がされますが、食道は胃酸に耐えられるようにはできていません。
そのため、胃で消化される途中の食物や、強い酸性の胃液が食道側へ逆流してしまうことで、食道は炎症を起こしてしまいます。これが、逆流性食道炎です。
逆流性食道炎は、もともと日本人には少ない病気といわれていましたが、食生活の変化などによって、最近訴えられる患者さんが増えています。
逆流性食道炎と咳が関係あるのはなぜ?
食道のいちばん上の部分は、肺につながっている気管の入口である咽頭と接しています。
食べた後にすぐ寝転んだり、逆流が強かったりすると、この咽頭まで胃液や内容物が上がってきてしまいます。
すると、咽頭や食道の粘膜に炎症が起きてしまい、胸焼けや呑酸(どんさん:胃液の逆流によって、口の中に苦味や酸味を感じること)、刺激で咳や嗄声(声がれ)といった症状がでてしまいます。
もちろん、逆流性食道炎は消化器の病気なのでもちろん、消化器の症状が出る方が多いです。
ですが、症状というのは、現れ方が人によって違いますので、慢性の空咳や声がれの症状だけ出る人、咳と消化器の症状とどちらも出る方・・・と様々です。
逆流性食道炎で咳が続く場合は、次のような特徴があるとされます。
- 胸部レントゲン検査では特に異常がないのに1か月以上(数年という人もいます)続く咳がある
- 痰のからまない「コホンコホン」というような咳がある
- 声がれや咽頭に違和感がある
- 食後1~2時間後に咳が悪化する
- 夜寝ている時や、仰向けになった時に咳が悪化する
- 気管支ぜんそくがある(関連性があるため併発しやすい)
では、逆流性食道炎はどのように診断されるのでしょうか。
逆流性食道炎の診断
咳が一番気になる症状の場合、まずは内科(もしくは呼吸器内科)を受診する患者さんが多いと思います。
まずは、そこで胸部のレントゲン検査などを受けて喘息などの病気がないかをチェックしてもらいましょう。
また、逆流性食道炎の咳の症状は、咳喘息と似ている為、咳喘息の治療をしていても効果がなく、「実は逆流性食道炎のよる咳だった…」ということもあります。
このように、「内科を受診したが特に病気はないと言われた」、「咳喘息の治療をしていたが、なかなか良くならない」等があれば、次は胃腸科(消化器内科)を受診しましょう。
食道の症状で消化器の病気を疑い、検査を行う場合は、胃の内視鏡検査(胃カメラ)を行い、直接粘膜の様子を観察します。
炎症などによる食道の荒れが認められた場合は、逆流性食道炎と診断され、治療を開始します。
まとめ
いかがでしたか?
咳の症状だと思うと内科(呼吸器)だと思いますよね。でも、その咳が3週間~1か月以上など、長くつづいている場合は、呼吸器の病気だけではない可能性もあります。
逆流性食道炎と診断された場合は、逆流性食道炎の薬を服用することで治療を行うことが出来ます。
逆流性食道炎は治療薬の内服だけではなく、生活習慣が大きくかかわっていることもある為、食事・生活の習慣を改善も必要です。
胃薬を飲んで咳が治る…というのは患者さんからすると不思議に思うかもれませんね。
ですが、症状の出ている場所=病気のある場所ではないのです。
あまり一人で悩まずにまずは医療機関を受診し、医師に相談をすることが大切です。