ポイツ・ジェガース症候群をご存知ですか?

印刷用ページ[2021/08/01] 胃腸科
こんにちは、横浜市胃腸科のららぽーと横浜クリニックです。
唇や指先のシミが気になった事のある方はいますか?シミの話なら皮膚科の話題かな?と思われるかもしれないですね。
実は、これらのシミと、消化管の疾患が関連することがあるんです。意外ですよね?
今回は、こうしたシミと消化管の関係があるとされる、ポイツ・ジェガース症候群についてお話していきます。

 

ポイツ・ジェガース症候群って、どんな病気?

繰り返す腹痛、血便、おう吐や貧血、唇や口の中、指先や足の裏に黒いシミという症状がある場合、ポイツ・ジェガース症候群(ポイツ・イエガース症候群)という、小児慢性特定疾病のことがあります。
そうなんです、この病気、未成年で発症することが多いのです。オランダのPeutz医師とアメリカのJeghers医師らが報告したことで、Peutz-Jeghers症候群と呼ばれています。

具体的には、食道を除く、胃から大腸までの消化管にポリープが多発する病気(ポリポーシス)です。
特に小腸にポリープができやすく、そのポリープの影響で血便が出たり、貧血になったりします。
ひどい時は小腸の終わりの部分(回腸)が大腸の内部に入り込んでしまう、腸重積(ちょうじゅうせき)を起こしたりします。

腸重積が起こると、腹痛や嘔吐をします。腸重積の腹痛は、強まったり和らいだりを繰り返すという特徴があります。
腸重積が正常な状態に戻らないと、はまり込んだ腸の一部が腸をふさいで、内容物や血流が止まってしまう腸閉塞状態になります。
そうすると、腸の一部が死んでしまう(壊死)こともありますので、緊急手術が必要となったりすることもあるため、怖い病気です。

 

ポイツ・ジェガース症候群の診断と治療

ポイツ・ジェガース症候群以外にも、子供にポリープが多発する病気があります。
家族性腺腫性ポリポーシスや若年性ポリポーシス、カウデン症候群などいくつもありますので、正しい鑑別が必要となります。
ポイツ・ジェガース症候群の約半数は遺伝性があるといわれていますので、

  • 唇や手足のシミ
  • 食道を除く消化管のポリポーシス
  • 同じ症状の家族がいる

という3つが揃うと確定診断となります。①②が揃えば、家族歴がなくても診断可能です。

小腸ポリポーシスによる腸重積の発症は9歳以降に増加し、10歳までに15%、20歳までに50%が合併します。
遅くとも8歳ころまでに全消化管を内視鏡検査で観察し、ポリープを切除して、消化管出血や腸重積を予防していきます。
一度ポリープを切除しても、また新たなポリープが次々に発生します。そのため、定期的に内視鏡検査で繰り返し切除を行うことで、開腹手術にならないよう治療していく必要があります。
唇や口の中、指先や足の裏の色素斑は乳児期からみられます。
家族歴やこの色素斑から、ポイツ・ジェガース症候群が疑われる場合は、症状が出る前から小腸を含む全消化管ポリープの診断・治療・経過観察を行って、開腹手術を回避することができれば、日常生活に大きな影響を及ぼすことはないようです。
開腹手術を繰り返してしまうと、術後の癒着による腸閉塞を繰り返し、手術で腸を切除することになり腸が短くなってしまいます。
腸が短くなると短腸症候群といって、下痢と栄養吸収不良を起こして栄養失調状態になり、生活の質(QOL)が低下してしまいます。

 

大人になっても…

成人してからも、消化管ポリポーシスに対する内視鏡検査と治療は、継続していくことが重要です。
ポリープ自体は組織奇形の一種で、本来的には良性です。
そのポリープががんになるリスクは低いのですが、合併症として消化管のがんや、すい臓がん・子宮がん・卵巣がん・精巣がん・肺がんなどを、若いうちから発症しやすいので、定期的に検査をすることがとても大切です。

 

おわりに

「ポイツ・ジェガース症候群」なんて、初めて聞いた方も多いと思います。発生頻度は12万分の1くらいで、日本国内では約600~2,400人の患者さんがいると推計されています。
原因は遺伝子の変異とされていますが、遺伝は約半数で、あとの半分は遺伝と関係なく発生しています。まれな病気ですが、こういう病気もあると知っていれば、症状が出る前に対策ができ、重症化を防ぐことができますね。
ポイツ・ジェガース症候群は、小腸にポリープができやすい病気ですが、食道以外の胃や大腸にもポリープができます。そして、ポリープのできやすい病気は、ほかにもいろいろあります。
ポリープは大人、それもそこそこ歳をとってから、と考えてはいませんか?ポリープは子供でもできるものです。だから、自分はまだ大丈夫、なんて事は言えないのです。
当院では、痛くない胃カメラや大腸カメラを行っていますので、心配な方もそうでない方も、ぜひ内視鏡検査を受けてみてくださいね。


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