腸結核はどんな病気?

印刷用ページ[2020/10/15] 胃腸科

こんにちは。横浜市胃腸科のららぽーと横浜クリニックです。

今回のブログのキーワードは「大腸」そして「結核」です。
・・・・大腸なのに結核なのか?と思ったでしょうか。
誰もが一度は耳にしたことのある「結核」という病気。結核と聞くと、呼吸が苦しく咳が出る=肺の病気を想像すると思います。実は、結核は大腸にも感染する恐れがあるのです。

今回は「腸結核」についてお話をしていきたいと思います。

 

結核はどんな病気?

結核は結核菌により人から人にうつる感染症です。明治時代から昭和20年代までの長い間、恐れられてきた病気ですが、国を挙げて予防や治療に取り組み、死亡率は100分の1以下にまで激減しました。
結核の約8割は肺に症状が現れます。結核菌が肺の内部で増えて、結核特有の様々な炎症が起こり、肺が破壊されていきます。

初期の症状はカゼと似ていますが、せき、痰(たん)、発熱(微熱)などの症状が長く続くのが特徴です。また、体重が減る、食欲がない、寝汗をかく、などの症状もあります。
さらにひどくなると、だるさや息切れ、血の混じった痰などが出始め、喀血(かっけつ:血を吐くこと)や呼吸困難で死に至ることもあります。

この肺結核が一番イメージがしやすく有名ですが、結核は肺だけとは限りません。他にも消化管、肝臓、胆管(胆汁の流れる管)、腹膜(お腹の中の臓器を覆っている膜)などのいろいろな場所に感染を起こします。
結核について分かったところで、本題に入っていきます。大腸に感染した場合はどうなるのでしょうか。

 

腸結核とは?

腸結核は、その名の通り、腸に結核菌が感染することで発症し、潰瘍ができる感染症です。
下痢、血便、腹痛、発熱、倦怠感(けんたいかん)、食欲不振、体重減少などで、症状だけでは腸結核だと診断できるような特徴的な症状はありません
このような症状だけでは別の病気も疑われることもあるのです。

栄養を吸収する小腸に感染した場合、栄養状態が急に悪くなり体重が減少し、顔色が悪くなります。炎症が進むと腸管が細くなることがあり、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。
どうして腸結核になってしまうのでしょうか。感染経路は様々ですが、4パターンが考えられています。

 

腸結核の感染経路は?

気になる腸結核の感染経路に関しては以下の4つが考えられます。

①肺結核の患者さんが結核菌の混ざった痰を飲み込むなどして結核菌が腸に感染する。

②肺には感染していないものの、口から侵入した結核菌が腸に到達し感染する。

③血液やリンパ液を介して結核菌が腸に届き、感染する。

④いや肝臓などの腸に接している他の感染臓器の結核病巣から直接感染する。

感染していても、全ての人が発症するわけではありません。加齢や病気、治療により免疫力が低下すると発症しやすくなると言われています。
結核は肺でしか起こらないと思われがちですが、様々な経路で大腸に感染することがお分かりいただけましたか?

では、腸結核はどのような方法で調べることが出来るのでしょうか。

                                                                          

腸結核の診断と治療方法は?

①血液検査

結核菌に感染しているかどうかを調べるために、インターフェロンγ(ガンマ)に注目したクオンティフェロン検査とT-SPOT検査があります。
結核感染を正しく評価する検査法といわれています。

②注腸X線造影

腸の状態を確認するために、肛門からバリウムと空気を入れてX線写真を撮影します。
回盲部や右側結腸に多発性の潰瘍が見られるのが特徴です。

③大腸内視鏡検査(大腸カメラ)

大腸内視鏡や小腸内視鏡検査で粘膜の様子を観察します。
活動期には不定形な潰瘍が複数、治癒期には瘢痕(はんこん:傷などが治った跡)になった潰瘍などが見られます。
また、病理検査や細菌学的検査に用いるため、潰瘍が起きている組織を採取して、生検(せいけん:組織の一部を採り、顕微鏡で詳しく調べる検査)を行います。

④細菌学的検査(便培養など)

便及び生検組織に含まれる結核菌を培養し、菌の有無を調べます。
生検組織に含まれるDNAを増幅し、結核菌のDNAが含まれれているかどうかを調べるPCR法を、細菌学的検査の補足として行うこともあります。

腸結核を調べる方法として、注腸X線造影を挙げましたが、潰瘍らしき影が見つかったとしても実際に腸管を見てはいないので、不確かではあります
腸管を観察することが出来る、大腸内視鏡検査で組織検査をし、腸結核になっているかどうか直接調べることが可能です。

治療については、肺結核と同様に抗結核薬を使用します
点滴や飲み薬での治療が主ですが、腸の穿孔(せんこう:組織が破れて内容物が漏れ出すこと)、出血、腸閉塞などが起きている場合には、手術を行うこともあります。

 

最後に

いかがでしたか?

大腸の病気に結核が関係するものがあるなんて驚かれたでしょうか。
当院のような年間に大腸内視鏡検査を7,000件以上行う施設であっても、腸結核はよく見る症例ではありません。抗結核菌剤の出現などで減少し、むしろ珍しい部類の疾患となっています

大腸内視鏡を初めて受けて、腸結核の潰瘍、瘢痕が見つかることや、腸結核に限らず症状が無くても他の大腸の病気になっていることもあります。
大腸の病気は症状に出ないものも多いです。あの大腸がんでさえ、進行がんとならないと症状にならないことがあるくらいなのです

症状は何かのサイン、そう思って内視鏡検査を受けたことがない方、もしくはしばらく受けていない方は症状をきっかけに一度内視鏡検査を受けることをお勧めします。
思いがけない病気と診断されるかもしれませんよ。(もちろん、なにも病気がないことが一番です!)


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