病理組織診断と免疫染色

印刷用ページ[2020/06/01] 胃腸科

皆さん、こんにちは。横浜市胃腸科のららぽーと横浜クリニックです。

今回は免疫染色がテーマです。免疫を染める・・・?あまり聞き慣れない言葉だと思います。免疫染色は内視鏡検査で採取した細胞を詳しくみる一つの方法です。
今回は、この免疫染色という検査がどういったものなのかを詳しくお話しします。

 

病理組織診断とは

患者さんの病変に対し、治療方針を決めるために内視鏡検査や手術で病変の一部またはすべてを切除し、顕微鏡でその病変がどのようなものであるか観察し診断を行います。
これを病理組織診断といいます。この診断の結果により病変の種類や悪性度などが判定されます。

・・・少し難しかったでしょうか。では、具体的な例を挙げてみましょう。
当院でも、内視鏡検査時に採取した胃や腸の一部を顕微鏡検査に提出することがあります。この顕微鏡検査の結果が病理組織診断の結果です。
「胃の赤い部分はただの炎症なのか?」「大腸ポリープは悪いものではないか?」等を、病理組織診断では調べる事が出来ます
では、病理組織検査について分かったところで、今回のテーマである「免疫染色」のお話をしていきましょう。


免疫染色とは

免疫染色とは病理組織検査の検査方法の1つです。抗体(こうたい:細菌やウイルスと戦い身体を守ってくれる、人間の身体の中で作られるタンパク質の1種)を用いて、組織中のタンパク質を染色する手法の事をいいます。
抗体は本来目に見えないものですが、これを目に見えるように染めて、特定の物質のみを検出するために発色反応を組み合わせたことから、免疫染色と呼ばれています
免疫染色はさまざまなタンパク質を特異的(とくいてき:特徴的にみられること)に検出することができる為、病変が悪性であるかどうか、病変が感染症であるかどうか、病変が腫瘍の転移かどうかなどを詳しく調べることができます

 


免疫染色の種類


少し難しい話になりますが、免疫染色には、一般的に4種類の方法が用いられます。

  1. オートラジオグラフィー法
    抗体に放射性同位元素(ほうしゃせいどういげんそ:何らかの放射線を放出する元素のこと)を結合させ、免疫反応後(めんえきはんのう:免疫系が異物に対して起こす反応のこと)にその放射線を検出する方法。

  2. 酵素抗体法
    抗体に発色反応で用いる酵素を結合させ、免疫反応後に標識した酵素に対する基質を反応させます。この酵素反応によって生じた色によって目的物質を検出する方法。

  3. 蛍光抗体法
    抗体に蛍光色素を結合させ、免疫反応の後に蛍光色素に対する励起波長の光を当てて蛍光発色させ、蛍光顕微鏡で観察する方法。

  4. 金コロイド法
    金粒子など可視物質の抗体を結合させ電子顕微鏡で観察する方法。

 

また、検出方法だけでなく抗原抗体反応(こうげんこうたいはんのう:抗原と抗体の間に起こる結合のこと)にも2種類の方法があります。
(※抗原:体内で抗体を形成・出現させる物質のこと)

  • 直接法
    抗原に直接結合する抗体に標識(目印)をし、一回の反応で検出する方法
  • 間接法
    抗原に直接結合する抗体(1次抗体)には標識(目印)をせず一回目の反応を行い、1次抗体に対する抗体(2次抗体)に標識(目印)をして、2回目の反応で検出する方法。

検出目的である抗原に直接反応する抗体を可視化するものが直接法それ以外の抗体などに反応し可視化するものが間接法となります。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。
このように免疫染色は病理検体の組織中のタンパク質を見やすいように染め、顕微鏡で観察すると言う手法で患者様の病変の診断を行うのにとても役立つ検査方法です。
なるべく分かりやすい言葉を・・・と選んではいるのですが、今回のテーマは少し難しかったかもしれません。
病理組織検査といっても、より詳しく見るために、そして正確な診断を行うために色々な検査方法があるのだという事を知ってもらえたらと思います。
正確な診断には、内視鏡検査などの臨床診断(臨床医)と、免疫染色を含む病理診断(病理医)の連携が大切です。
当院でも内視鏡検査と同時に病理組織検査のために組織を採取することがあります。(もちろん、必要があれば内視鏡検査以外でも病理組織検査に提出することがあります)定期的な内視鏡検査で毎年正確な診断を受けて自身の健康を守っていましょう!


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