蜂窩織炎(ほうかしきえん)ってどんな病気?

印刷用ページ[2019/07/15] 皮膚科・アレルギー科
こんにちは、横浜市内科皮膚科のららぽーと横浜クリニックです。
みなさんは「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」という病気をご存じですか?あまりなじみのない名前の病気ですよね。
犬や猫に噛まれた時、発熱や倦怠感、皮膚の赤みや痛みなどに悩まされたことがあれば、それは蜂窩織炎だったのかもしれません。今回は、この蜂窩織炎についてお話ししたいと思います。
 

蜂窩織炎とは?

皮膚の感染症の一種であり、「蜂巣炎(ほうそうえん)」とも呼ばれます。耳慣れないと思いますが、実は身近な病気で、40~500人に1人は蜂窩織炎にかかっています
蜂窩織炎は、真皮~皮下組織に化膿性炎症(膿が溜まってしまうタイプの炎症)が起こります。炎症を引き起こすのは、黄色ブドウ球菌やレンサ球菌といった化膿性の細菌です。
体のどの部分にも発症しますが、特にかかりやすいのは膝下です。発赤や腫脹などを伴い、境界がはっきりしないという特徴があります。
誰にでも起こりうる一般的な感染症であり、人にうつる心配はありません。
ちなみに蜂窩織炎の「蜂窩」は昆虫の「ハチの巣」という意味です。炎症が起きている組織を顕微鏡で見ると、ハチの巣のような形に見えることから名付けられました。
 

蜂窩織炎の症状

「虫刺されかな?」と思っていると、いきなり足が太くなり、あっというまに足全体が赤く腫れ上がります。
膝下の皮膚に最もよく生じますが、体のどの部分にも生じ、通常は片手や片脚など、体の片側だけに症状が現れます
初期症状は下記の様な症状皮膚に出ます。
  • 皮膚が赤くなる
  • 腫れる
  • 熱感がある(触ると熱い)
  • 局所の圧痛(触ると痛い)
 
ただし、中には次のような全身症状が出ることもあります。
  • 発熱
  • 悪寒戦慄(寒気とふるえ)
  • 関節痛
  • 倦怠感(だるさ)
 
そのほか、心拍数の上昇・低血圧・錯乱状態といった深刻な症状にみまわれることもあります。40度にせまる高熱で意識が朦朧とし、救急車で搬送されて入院する人もいるくらいです。
実際、一般の救急外来でもっとも多い皮膚病は「蜂巣炎」といわれています。
急にこんな症状が表れてしまうと思うとこわいですね。何が原因で急に皮膚が赤くなり腫れあがってしまうのでしょうか。
 

蜂窩織炎の原因

蜂窩織炎は、傷口から黄色ブドウ球菌や連鎖球菌といった細菌が入り込むことで起こる「自然原因」と、乳がんや子宮頸がんなどの術後に発現しやすいリンパ浮腫による「病的原因」の2つが主な原因となっています。
 

■自然原因

 やけど、外傷(刺し傷、ひっかき傷など)、人咬傷、犬・猫咬傷、虫刺され、皮膚炎など、傷口から細菌が侵入し発症します。
 傷からの細菌侵入のみならず、汚染水により、毛穴や汗腺(かんせん:汗をだす腺)経路で細菌が侵入することがあり、この場合には免疫力の低下している高齢者に発現傾向があります。
 

■病的原因

 乳がん、子宮頸がん、子宮体がんなど術後におけるリンパ浮腫の状態の方や、日頃から「むくみ」がみられる人はリンパの流れが悪く、細菌やウイルスに対する防衛機能低下により、蜂窩織炎を引き起こしやすくなります。
 また、脂肪吸引や薬物の皮下注射、さらに糖尿病患者、子どもの場合はインフルエンザなど、こうした場合には緑膿菌などによっても蜂窩織炎が引き起こされる場合があります。
 
蜂窩織炎についてわかったところで、ここからは「もしも蜂窩織炎になったら……?」というお話をしていきましょう。
 

何科を受診すればいいの?

一般的には、皮膚科が推奨されています。
しかし、場合によっては外科的な処置や入院が必要な事もあります。外科や整形外科でも、正しい診断と治療を受けられます。内科や小児科でも、同様に検査・診断、治療を受けることができます。
「どの科にかかろうか?」と悩むよりも、まずはすぐに行ける病院を受診して医師から診断を受けることが重要です。
治療開始が早いほど、悪化を防いで早く治すことができます
では、どんな方法で蜂窩織炎と診断をしていくのでしょうか。
 

蜂窩織炎の診断

蜂窩織炎と似たような他の病気の可能性を考えて、患者さんによって必要な検査が変ってきます。また、受診した病院や科によっても検査の内容が変わります。

1.医師による病歴の聴取

一般的には、局所の視診・触診、問診などが基本となります。

2.血液検査

炎症状態のチェックのために採血を行います。こういった病気の場合、炎症を示す数値が高くなっていますが、それだけでは診断の決め手にはならないことがあります。(白血球、CRPなど)
尿酸値も確認すれば、痛風との鑑別診断ができます。(尿酸値が正常なら痛風の可能性は低い)

3.その他の検査

整形外科を受診した場合には、レントゲンやCTなどで骨に石灰沈着などがないかどうかを調べて痛風かどうかを判断する場合があります。また、超音波検査(エコー)を行う場合もあります。
見ただけでわかるのに!と思うかもしれません。ですが、蜂窩織炎と似た症状を持つ病気として壊死性筋膜炎があります。
壊死性筋膜炎は致死率が高い病気のため確実に鑑別しなければなりません。細部までしっかりと対照鑑別し、誤診を防がなければいけません。
そのため症状に応じて必要な検査を医師が判断して行うので、病気の状態によって必要な検査が異なるのです。
 

蜂窩織炎の治療

蜂窩織炎の原因が細菌なので、抗菌薬での治療が有効です。通常は1~2週間の継続投与を行います
ただし、蜂窩織炎は原因菌を完全に死滅させなければ再発してしまうため、場合によっては1か月以上の継続投与を行います
基本的には蜂窩織炎の主な原因となる黄色ブドウ球菌、連鎖球菌を死滅させる抗生物質の投与から始め、症状の改善がみられない、または悪化傾向にある場合には、他の原因菌を疑い、抗生物質の変更を行っていきます。
原因菌ごとに見る内服薬は下記の通りです。
 
人・犬・猫咬傷や肉屋・魚屋での傷口から発症した場合は下記の抗生物質を使用します。
 
基本的には上記の抗生物質を内服することによってよくなるため通院で十分治療が可能です。しかし、全身状態がよくなかったり重症の場合には、安静と治療のために入院が必要となります。入院が必要な場合は下記の通りです。

★入院が必要となる場合

  • 高熱が続く
  • グッタリしていて日常生活に支障がある
  • 急激に悪化している
  • もともと持病などがあり感染が重症化するおそれがある
  • 飲み薬だけではなかなか回復しない場合
  • 症状が重く安静が必要な場合
 
また、糖尿病や免疫不全などの病気があると重症化しやすいので、早期から入院治療を行う場合もあります。
内服だけで十分か、外来で点滴を併用するか、入院して安静を確保し点滴を管理するかなども状態によって変わります。場合によっては、長期(1ヵ月~)の服薬が必要なこともあります。
注意してほしいことは、決して自己判断で薬を中止しないこと(※これは蜂窩織炎に関わらず、どの病気でも同じことですが……)。
局所の症状がおさまっても、体の中にはまだ細菌が生き残っています。完治するまでは、しっかりと指示された期間薬を飲み続けましょう。
 

最後に

蜂窩織炎はあまり耳なじみのない病気かもしれませんが、意外と身近なものなのです
体のどの部分にも生じますが、発症は膝下に最も多く、あっというまに足全体が赤く腫れ上がります。
外傷(刺し傷、ひっかき傷など)、人咬傷、犬・猫咬傷、虫刺され、皮膚炎などの傷口から細菌が侵入することで発症します。
通常は1~2週間の抗生物質を内服することにより完治しますが、症状がひどい場合、内服しても良くならない場合は入院が必要な場合もあります。
治療開始が早いほど悪化を防いで早く治せます。症状があったら早めに皮膚科を受診しましょう。
当院でも診察していますので、お気軽にご相談ください。
 

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