腹部診察の時に膝を曲げる理由

印刷用ページ[2019/01/15] 胃腸科

こんにちは。横浜市の胃腸科のららぽーと横浜クリニックです。
胃腸科の診察では腹部に症状がある場合にお腹の触診をすることがあります。皆さんは胃腸科の診察で腹部の触診をされた経験はありますか? 
経験のある方は、仰向けになって膝を立てたあの体勢に覚えがあるかも知れません。
今回はそんな「腹部診察の時に膝を曲げる理由」についてお話しします。

 

腹部触診で何が分かるのか?

まず、腹部の触診によって何が分かるのでしょうか。
医師が直接患者さんに触れることで、体温や腫脹(炎症による腫れのこと)、浮腫(水の溜まり具合)、圧痛、脈拍などが分かります。
また、その際に医師は患者さんの反応や顔色なども同時に伺うことが出来ます
単純に感触だけを調べているわけではなく、様々な要素を「診ている」のですよ。 

 

どうして仰向けで膝を立てる?

腹部の触診を行う時にはベッドに仰向けになり、両膝を90度に曲げた体勢を取ることになります。上を向いて横になった状態を「仰臥位(ぎょうがい)」と呼びますが、その体勢で膝を立てると「膝屈曲位(しつくっきょくい)」と呼ばれる体位になります。
実は、この膝屈曲位になると腹壁の緊張が和らぎます。お腹の力が抜けるのです
腹壁が緊張していると医師が皮膚ごしに内臓に触れる妨げとなってしまい、正確な所見をとる妨げになります。それを避けるための工夫が「膝を立てる」ということだったのですね。

 

診断の手順

腹部診察の際、医師は次のような順で状態を確認します。参考までに表記しますので、「お医者さんごっこ」の時にぜひ役立ててください(笑)。

 

(問診) → 視診 → 打診 → 触診 → 聴診


●視診

問診で得た情報を基に患者の顔色、腹部の変化(腹部腫瘤や鼓腸、腫れ、陥没など)をみたり、皮膚の変化(変色、色素沈着、発疹など)がないかどうかを見て確認します。

●打診

指などでお腹を叩くようにして触れ、腸の鼓音(ポンポンという音)からガスの量を把握したり、鼓音の位置や音を確認します。「患者に触る」という意味では打診は触診の一部とも言えますが、「打つことによって生じた音を聴く(音から判断する)」という意味では聴診に近いと言えるでしょう。

腹部全体の鼓音がある場合は腸管内にガスが充満している場合があります。また、体勢を変えたりして音の位置や音の違いを診断材料とします。

●触診

各臓器の位置する場所を身体の表面から触って調べます。
その際に圧痛の有無と程度を確認し、「筋性防御」と言われる「腹筋の緊張で腹壁が石のように固くなる現象」がないか確認します。
筋性防御や腹壁の硬化がある場合は「腹膜炎」の疑いがあると考え、腹水があれば、波動の有無を確認します。「波動」というのは腹水が溜まったお腹に軽い衝撃を加えた時に感じられるもので、まさに触らなければ分からない、触診ならではの情報と言うことが出来ます。

●聴診

お腹から発せられる音、「腸雑音」を聴きます。
「グル音」とも呼ばれるこの音は、腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)という消化物を押し流していく運動によって発生するもので、およそ10~15秒ごとに聴こえてきます。
腸雑音が強いと胃腸炎や機械的腸閉塞の可能性があり、グル音が消失すると、腸閉塞や腹膜炎の疑いがあります。
 

こうして得られた情報から総合的に判断して病気を断定していき、症状にあった投薬治療や今後の方針について考えます
上記に加え、必要に応じた臨床検査(りんしょうけんさ;採血や機器などを用いた検査)によって更に詳しく病気を見極めていくことになるのです。

 

最後に

自覚症状が軽いものだと感じていても、適切な体勢を取ることで医師が様々な情報をキャッチすることに繋がり、それが正しい診断へと至ります。
中には思いがけない病気が見つかる可能性もありますので、医療機関で指示された体勢を取ることに対しては皆さんも面倒臭がらずに積極的に協力してくださいね。

ららぽーと横浜クリニックには腹部を調べるための優れた環境が整っています。
診察室では分からない病気に対しても精密な検査として胃や大腸の内視鏡検査が可能ですので、腹痛や張りなど、お腹の症状がある方は我慢せずに当院にご相談ください


新着情報

記事 新着(24時間)

-

コメント 新着(2日)

-

新着メディア (7日)

新着メディアはありません。