「心臓癌」は存在しないの?

印刷用ページ[2018/11/15] 内科

皆さんこんにちは。横浜市内科のららぽーと横浜クリニックです。
以前「日本人の死亡原因で癌(がん)が増えている」というお話をしました。「癌」と名の付く病気は様々ありますが、体の色々な場所の癌の名前を聞く中で「心臓の癌」の話は聞いたことがないと思います。

なぜ心臓癌についてあまり話されないのでしょう?
今回は「なぜ心臓癌はないのか」についてお話したいと思います。

 

心臓癌はあるのか?

結論から言うと、心臓癌はあります
が、一般的に心臓には癌は少ないとされています

粘液種などの癌(=悪性)ではない良性の腫瘍は時々発見されますが、心臓に悪性腫瘍が発生することは稀なことです。
転移したものではない、心臓から発生(原発と言います)する腫瘍は元々少なく、剖検例(解剖して調べること)でもわずか0.001〜0.003 % と集計されており、さらにその中で悪性腫瘍は約2~3割程度とされています。

心臓癌はとても珍しい癌であるということ、お分かりいただけたでしょうか。

 

現在の有力説

心臓に悪性腫瘍の発生が少ない理由としては、いくつかの説が挙げられています。

◆心筋細胞は高度に分化しており、細胞分裂を起こさない

心臓の図説

心臓は横紋筋(おうもんきん)という特殊な筋肉とその間にある結合組織や血管からできています。
この分化の進んだ細胞である横紋筋は細胞分裂を起こしません。このように、高度に分化した心筋細胞からなる心臓は、細胞の異常増殖の病気である癌や肉腫を発生しないという説があります。

◆癌細胞は高温に弱く、40℃で死滅してしまう

免疫を担う大型の単核細胞であるマクロファージ(身体に侵入した病原体を取り込ん で消化するアメーバ状の細胞)は体温が上昇して38.5℃になると活性化し、1℃上がると免疫力は5〜6倍になるとされています。
一方、癌細胞は体温が35℃前後の低い時に最も増殖するのですが、39℃以上になると増殖が止まり、42℃を超えると多くの癌細胞は死滅してしまうようです。
一般に癌細胞は乳酸のせいで酸性に傾きpH(ペーハー)が低いため、熱に弱いと考えられていますが、心臓内は人間の体の中でも最も温度が高く、腫瘍細胞は40℃近くもある心臓の熱に勝てず死滅してしまうのではという説です。

◆心臓から癌抑制ホルモンが出ている

最近になって、心臓からも幾つかのホルモンの出ていることが明らかになりました。その中で心房から分泌されるナトリウム利尿ペプチド(ANP)が肺癌術後の転移を抑制していることが分かっています。
そのため現在では、心筋の肥大や繊維化を抑制している以外にも、「心臓自体の腫瘍発生も抑制しているのではないか」という考えが最も有力になりつつあります。

あるいは、これらの説が複合的に作用した結果なのかも知れませんが、心臓癌は非常に珍しい部類の癌と言えます。

 

最後に

心臓癌に関してはその症例の少なさから、未だに解明されていません。
しかし、心臓の横紋筋が細胞分裂を起こさないため癌や肉腫が発生しないということや、癌細胞が熱に弱く40℃もある心臓付近では死滅してしまうこと、心臓から癌の抑制ホルモンが出ていることなど、諸説ありますが、心臓に悪性腫瘍が発生しにくいということは事実です

また、心臓癌自体はとても珍しい病気なのですが、癌自体は国民病と言われており、罹患率も年々増えています。早期発見することが治療の第一歩であるため、定期的に健診を受けることが大切です。

ららぽーと横浜クリニックでも、心臓癌の治療までは出来ませんが、胃や大腸を始めとした癌の検診を受けることは可能です。気になる症状がありましたら、お気軽にご相談ください。

 


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