注射・座薬・内服、早く効くのは??

印刷用ページ[2018/09/15] 内科

皆さんこんにちは。横浜市の内科、ららぽーと横浜クリニックです。
皆さんは病院で処方されたお薬の「飲み方(体内に取り入れる方法)」が違うことを「何故だろう?」と意識したことはありますか?
前回の記事では薬の形の違いについてお話ししました。今回は「注射」と「座薬(外用)」、「内服」の、どの方法で薬剤を用いると即効性があるのかについてお話ししたいと思います。

 

それでは早速ですが、はっきり分かり易くランキング発表!!!!

第1位  注射薬

第2位  座薬

第3位 内服薬


何故この順番なのか、まずは項目ごとに解説していきましょう。

 

1位:注射薬

一概に「注射」と言っても「皮下注射」や「筋肉注射」、「静脈注射」などに分かれています。人間の皮膚は表面から、表皮→真皮→皮下組織→筋層という構造になっており、それぞれどの深さまで針を進めるかによって分類されているのです。

どうしてこのような使い分けがなされるのかというと「薬剤を注射する深さによって、その吸収スピードが異なるから」なんです。
 注射する層の図解
皮下組織は血管が少ないため吸収速度が遅いのですが、反対に筋層は血管に富んでいるので吸収速度もとても早いです。そして静脈注射はそのまま血管系に入るので瞬時に全身をめぐります。
吸収速度を相対的に表すと、静脈注射:筋肉注射:皮下注射=10:2:1とも言われます。つまり、静脈からの注射は筋肉の5倍、皮下の10倍も吸収が速いのですね。
なお、注射剤の効果の持続時間は吸収速度の反対になるので、効果を持続させたい場合には筋肉注射が望ましいと言えます。

※皮内注射:ツベルクリン反応など皮膚の局所反応を調べるときや皮膚に限局した作用を期待するときに用いります。

 

2位:座薬

さて、続いては座薬(坐薬)。座薬とは本来「外用薬」のくくりに入りますが、今回はお尻から入れる方法(座薬)に限定して述べていきます。
こちらは肛門から体内に入れた場合に、直腸で吸収されます。実は、直腸で栄養などを吸収した血液は肝臓を通らずに肺へと回ります。そして(最終的には肝臓に達するのですが)、肝臓を介さずに全身に広まっていきます。
肝臓には解毒作用がありますが、これが薬の成分までも分解し、薄めてしまうことにもなります。しかし、座薬を用いることによって「肝臓による分解を受けることなく全身に薬効成分を巡らせることができる」のです。
更に、当然ながら肝臓を介さないことで、肝臓への負担も軽くて済みます。内服薬と比較して、座薬には薬の投与量を減らすことで相対的に肝障害を引き起こす可能性を下げる目的もあるのです。
 臓器のイラスト
また、座薬を用いる理由の一つとして「口から薬を飲めない人(体調の優れない人や嘔吐症状のある人)」にも上手く処置を行うことが可能というメリットも大きいです。その他には痔などの肛門領域の処置が早く行えるということが言えます。当院のような肛門科ではおなじみの処置と言えますね。

 

3位:内服

最後に内服薬の代表格である錠剤で考えていきましょうか。
錠剤は胃や腸から吸収され、「門脈」という血管に到達し肝臓に入ります。肝臓から肺にいき、他の栄養などとともに血流にのって全身に広がります。
 

門脈とは、胃腸や膵臓(すいぞう)、脾臓(ひぞう)から集められた血液を肝臓に集めている血管です。消化された飲食物は、胃や腸の粘膜から吸収されて血管内に入ります。食べ物の養分を豊富に含んだ血液は、そのまま全身を巡るのではなく、一旦肝臓に送られる仕組みになっています。

 

まとめ

ここまでの流れを踏まえて、最後に比較してみましょう。

1位の注射の静脈に打つ方法は直接血管に入り瞬時に全身に巡るので1ステップ。ほとんどあるようで無いようなものです。

2位の座薬は直腸→肺→全身となるので3ステップですね。

3位の内服は胃→門脈→肝臓→肺→全身の5ステップです。

なんだか難しく書いてしまったかもしれませんが、要するに全身に薬剤の成分が行き渡るまでのステップが少ない程、早く効果が表れるということですね。

さて、今回は注射と座薬と内服という、3つの方法でどれが早く効くのかという比較を主題に扱った内容でした。
医療の現場でお薬を用いる目的は、状況や患者さんの容体など、その時々で異なります。今回は詳しく触れられませんでしたが、同じ内服薬でも錠剤とカプセル、粉薬などではそれぞれ体内での吸収過程も異なります。当然ながら「早く効くから注射薬が一番優れている!」などという単純な話ではないということを忘れないでくださいね。


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