ヒトの大腸~肛門の発生学

印刷用ページ[2015/09/01] 胃腸科

こんにちは。皆様、体調はいかがでしょうか。さて今回は、クリニックのブログらしくこんなお話をしていきましょう。

「ヒトの大腸と肛門はどうやってできたのか?」

理科の授業?のようですね、内胚葉由来とか外胚葉由来だとか。中学生や高校生の頃を思い出します。

 

受精してまだ子宮内膜に着床もしない妊娠2週目ごろより、細胞分裂は倍々になり始め、器官形成がはじまります。

受精卵が着床すると、中の内細胞塊は、胚盤葉上層(将来、体のすべての組織を構築する未分化な細胞集団です)と、胚盤葉下層に分かれます(卵黄嚢ともよばれ、胎盤が完成するまでの間、赤ちゃんに栄養を供給します。胎盤の成長とともにサイズが小さくなり、妊娠13週頃にはその役目を終えます)。

胚盤葉上層は、細胞の一部が内部に折り畳まれ、ちょうど風船のなかにもうひとつ小さい風船がはいっているような状態になり、この運動を「陥入」といいます。

 

(図1)

 

・・・まだ付いてきてくれていますか?・・・

陥入運動のあと、この細胞は胚盤葉下層を押しのけて内胚葉を作り出したり、内胚葉と胚盤葉上層の間で中胚葉を作り出したり、胚盤葉上層に残った細胞が外胚葉となり3つの胚葉を確立します。

この3つの胚葉を確立することが組織や器官を作り出す基本となるのです。

 

(図2)

 

さて、この3つの胚葉はこの後どうなっていくのでしょうか?

細胞レベルからするとかなりすっとばしたお話になりますが、将来どのように成長していくのかをあげてみました。

 

(図3)

 

 

消化管は内胚葉からできます。消化管の基となる原腸(原腸胚、原始腸管とも呼ばれます)が形成されます。この原腸は頭側からおしり側にむかって前腸・中腸・後腸にわかれます。

(また上のイラスト(図2)で原口とよばれる、袋の出入り口のように見えるところがあるのがわかりますでしょうか?ヒトをはじめとする脊椎動物はこの原口が肛門になります。)

 

《前腸》

 ・咽頭 ・食道 ・胃 ・十二指腸の上半分

《中腸》

 ・十二指腸の下半分 ・小腸(空腸、回腸) ・盲腸 ・虫垂 ・上行結腸 

 ・横行結腸の右2/3

《後腸》

 ・横行結腸の左1/3 ・下行結腸 ・S状結腸 ・直腸

 

前腸には、口咽粘膜とよばれるものがあり、それが破れて口腔の開口部となり、外胚葉由来の口腔上皮とつながります。

また、後腸にも排泄粘膜とよばれるものがあり、破れて肛門となり、外胚葉由来の直腸外方部上皮(いわゆる肛門です)につながります。*ちょうどその境目を歯状線といいます。

肛門は、内胚葉由来の器官(直腸粘膜)と外胚葉由来の器官(肛門外表皮)がひとつの部位に集まっている場所であるがために、病気が混在して複雑・多様化してしまうことがあるのです(例;痔ろう)。

 

こうしてみるとヒトの体ができてきたように見えますね。これがすべて妊娠4~7週目(妊娠2ヶ月ころ)の胎芽期(たいがき)と呼ばれる時期に行われ、将来お母さんのお腹から出ても健康に生きていけるように必要な器官形成がされる時期です。ちなみにこの胎芽期がすぎると、中枢神経や筋・骨格の発達や心臓の拍動が起こり、よく知られる胎児と呼ばれる時期に入ります。

 

それにしても、ヒトの体は神秘的ですね。約10か月お腹の中にいる間に色々な組織・臓器が出来上がり生まれてくるんですものね。不思議な感じです。

 

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