胃の内視鏡検査を受けられる患者さんに「検査を受けるきっかけになった事はなんですか?」と問診させていただくと…

「兄が去年、胃がんでなくなった。」「ママ友だった方が、突然胃がんでなくなったので。わかってから3ヶ月ぐらいしか経ってなかったんですよ。」と、検査する決心を後押しする出来事があります。

進行速く、比較的若い年齢で発症する胃癌・・・有名な「スキルス胃がん」です。

今回はこの「スキルス胃がん」についてお話しようと思います。

 

「スキルス胃がん」はここ数年でもメディアで取り上げられる機会も多くなり、よく知られるがんの一つとなりましたね。怖い病気ランキング1位を受賞しそうなくらい恐れられています。

総論的には、胃の悪性腫瘍は、

①胃粘膜から発生したもの(胃がん) ②粘膜以外の細胞から発生したもの(胃肉腫など)

の2つに分類されます。

スキルス胃がんは①に入り、胃がん全体の約10%程度を占めています。

 

普通、胃がんというと男性に多いイメージがありませんか?実際にはスキルス胃がんの場合は特に30~40代の若い女性に多くみられます。女性ホルモンが関係しているからではないかとも言われていますが、明確な理由は不明です。

 

「スキルス」という言葉の語源はギリシャ語のskirrhos(硬い腫瘍)から来ています。

一般的に、胃がん組織は正常胃壁と比較して硬いものです。

通常の胃がんは胃の壁を垂直方向に浸潤していくものですが、「スキルス胃癌」胃壁の内側の部分を這うようにして進展していくのです。

進展していった結果、胃全体が縮みあがるような形になり胃全体が硬くなったようになります。この特殊な特徴をとらえて付いた名前が「スキルス胃がん」なのです。

*胃がんは肉眼的な形で分類でき、医師国家試験問題でも有名な「ボールマンの分類」が広く使用されています。スキルス胃がんは、ボールマン4型:びまん浸潤(しんじゅん)型に分類されます。「胃壁の硬化・肥厚」が特徴です。

 

この「スキルス胃がん」は進行が速く、「ほんの数ヶ月前までは元気だったのに…」と言う話はよく聞かれます。スキルス胃がんは胃の表面に潰瘍を作ったりしないため、胃粘膜表面からは病変は発見されにくいけれど、実は胃壁を伝って進行しているといったケースが多く、進行が速い印象を強めているのかもしれません。

内視鏡の観察や他のCTなどの画像検査でもなかなか発見しにくい、まさに盲点をつくような胃がんなのです。

 

スキルス胃がんは初期には無症状ですが、かなり進行したケースでは胃が硬くなっているので胃が腫瘤のように触れます。その他には胃の中が狭いために食欲不振や食事量の激減、吐き気や血便を伴うことがあります。また、進行が速いために「最近太ったのかな?むくんでるのかな?」と感じても、実は腹水が溜まっているなんてこともあります。

またスキルス胃がんが進行すると「腹膜播種(ふくまくはしゅ)」という状態になります。腹膜播種とは、がん細胞が胃壁を貫いて外に出てしまいお腹の中に散らばって腹腔を包んでいる腹膜に付いて増殖した状態です。

腹膜に種を播くように広がっている様子から、その名前が付いています。

 

胃がんの原因は、DNAを傷つけてしまう可能性のある物質により、細胞の核の中のDNAが傷付くと発生しやすいことが明らかになってきました。ヘリコバクター・ピロリの感染や慢性胃炎などが胃の細胞を傷付けてしまうため胃がんの主因であるとも言われています。

更には普段の生活習慣で塩分の過度な摂取や喫煙、アルコール、刺激性の強い食品の過度な摂取なども胃に負担がかかりやすく胃粘膜を傷付けてしまう可能性が高いため、やはり原因の一つともいわれています。

 

こんな風に身近に原因があるかと思うと、何だかちょっと怖くなってきますね。

胃の症状があるのに放っておくのことは最も良くないことですが、スキルス胃がんはほぼ症状の出ません。早期胃がんであれば内視鏡で切除治癒が可能なタイプもあります。早めの胃内視鏡をお勧めします。

 

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