みなさん、こんにちは。横浜市肛門科のららぽーと横浜クリニックです。
当院では、年間約1,500件の肛門の日帰り手術を行っています。
血豆を除去したり、膿を出したりといった簡単な手術であれば、その場で行うこともありますが、痔を根本から直すような手術は必ず大腸内視鏡検査を行ってから、手術を行います。
それは一体なぜなのでしょうか。答えは、「肛門の手術を阻む病気」が存在するからです。
今回は、肛門の手術を阻む病気たちについて解説をします。

 

肛門の手術前はなぜ大腸内視鏡検査が必要なの?

ズバリ「肛門の手術を行ってはいけない病気の方」がいるからです。
具体的にはどのような病気なのでしょうか。

■炎症性腸疾患(クローン病・潰瘍性大腸炎)

痔瘻は直腸からばい菌が入って炎症を起こし、肛門の周囲に膿が溜まる病気です。
基本的には、こうした感染に引き起こされる病気ではありますが、感染に関係なく痔瘻が出来てしまう方がいます。
それが、クローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患です。
一般的に痔瘻は手術で治すことが出来ますが、炎症性腸疾患をお持ちの方の痔瘻は、完全に治すことが困難なのです。
炎症性腸疾患を見落として通常の痔瘻の手術を行ってしまうと、傷がなかなか治らなかったり、術前よりひどい状態になってしまうことがあるため、炎症性腸疾患の有無を大腸内視鏡検査でチェックを行うことが必要です。

■大腸がん

痔のよくある症状として、「出血」が挙げられます。
出血は、いぼ痔(痔核)や切れ痔(裂肛)でみられることがあるのですが、肛門よりもっと奥の大腸からの出血ではないことを確認することが大切です。
「痔だと思っていたら実は大腸がんでした…」なんて話は珍しくないのです。
肛門科の診察のでは直腸を観察することはできますが、肛門から15~30センチ程奥にあるS状結腸(大腸がんの好発部位です!)をみることはできません
痔の多くは放置をしても命に関わる病気ではありませんが、大腸がんは放置すると命を奪う病気です。
ですから、痔があるから出血の原因は痔である!と決めつけるのは非常に危険です。
しっかりと大腸内視鏡検査で、出血の原因が大腸がんではないことを確認することが必要です。


まとめ

いかがでしたか?
痔の手術の前に大腸内視鏡検査が必要な理由は、「肛門の手術を行ってはいけない病気の方」がいるからです。
勿論、痔の手術の前に大腸内視鏡検査を行うかたで、クローン病、潰瘍性大腸炎、大腸がんといった病気の患者さんは、多くはありません。
ですが、「多くないから」という理由で内視鏡検査を行わず、無責任な手術を行うことは大変危険です。
大腸がんがあれば痔の手術どころではないですし、クローン病や潰瘍性大腸炎であれば手術よりもそちらの病気のコントロールが優先となる場合もあります。
そのため、肛門手術を阻む病気ではないことを確認したうえで、手術を行うことがきちんとした医療と言えるでしょう。