みなさん、こんにちは。横浜市肛門科のららぽーと横浜クリニックです。
今回は切れ痔についてのお話です。当院には毎日肛門科の患者さんが来院されます。皆さん悩みはそれぞれですが、やはり「切れ痔」で悩んで来院される患者さんも多いです。
今回の記事では「切れ痔をどうやって治療していくか」にスポットを当ててお話していきます。


切れ痔とは?

まず、切れ痔とはどういう状態をいうのでしょうか。
切れ痔(裂肛)とは、便秘の時などに硬い便が肛門を無理に通過することで、肛門管の上皮が切れたり裂けたりした傷の事です。
若い女性に多いことも特徴の一つです。

原因は多くの場合が便秘や下痢などの排便異常、肛門が狭くなることなどです。多くはないケースとしては、クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患や、肛門を使った性行為などが原因となる場合もあります。
症状は、排便時や排便後の痛みと出血です。肛門管には多くの神経が分布しており、痛みに敏感な場所です。ですから、裂肛がある人は排便時に激痛を感じてしまいます。
裂肛が慢性化した場合や重症の場合では、排便後もズキズキと痛みが続きます。


切れ痔はどのように治療するの?

切れ痔の治療は、基本的には薬物療法ですが、慢性化した切れ痔(治らずにいつも切れ痔がある状態)や肛門が狭くなっている状態(肛門狭窄)であれば手術となります
それぞれを詳しく解説しましょう。

薬物療法

初期の急性の切れ痔の場合では、ほとんどの場合は内服薬(緩下薬、血行改善薬、抗炎症薬など)と軟膏・座薬などの外用薬だけで改善します。

薬の例としては・・・
内服薬:酸化マグネシウム、ヘモナーゼ、サーカネッテンなど
外用薬:ボラザG軟膏、ネリプロクト軟膏、強力ポステリザン軟膏など

が挙げられます。他にも保険適応ではない薬もありますが、効果や副作用の面から一般的ではありませんので省略します。

 

手術療法

肛門ポリープや見張りいぼを伴う場合は慢性裂肛と言って、薬物療法では十分なことも多いです。

例えば、便秘症があり硬い排便を繰り返している場合や、肛門が狭くなる症状がある場合は、傷がなかなか治っていきません。
この場合は切れ痔を繰り返し、肛門がますます狭くなり、排便時の痛みへの恐怖で排便を我慢してさらに便が硬くなり…という悪循環を繰り返して更に悪化してしまいます。
こうした悪循環により、切れ痔が慢性化しまった場合は、手術でないと治療が難しいことがほとんどです。

手術の方法としては・・・
側方内括約筋切開術(LSIS)
薬物療法を行っても切れ痔を繰り返す場合は、内外肛門括約筋(ないがいこうもんかつやくきん:肛門の時などに肛門を広げたり縮めたりする筋)の過度な緊張があって切れやすくなることが分かっています。
そこでこの括約筋の過緊張状態を改善するのがLSISと呼ばれる手術です。括約筋を切開しますが、適切な範囲内で切開を行うので、術後に肛門のしまりが悪くなるといったことはありません

裂肛根治術
慢性の切れ痔というのは深いポケットのようになっているため、治りにくい形となっています。そこで、切れ痔を周りの見張りいぼ(切れ痔を繰り返すことで切れ痔の周りに出来てしまういぼ痔)などと一緒に切除し、治りやすい形に整えます。

皮膚弁移動術(SSG)
裂肛切除を通常通りに行った後、切除後の傷の近くの皮膚部分をスライド移動させて持ってきて、縫合します。縫った外側を切開し(減張切開)皮膚が肛門に寄りやすくします。

多くの切れ痔は「裂肛切除+側方内括約筋切開術」で治療できるため、裂肛切除+皮膚弁移動術が必要となるケースは多くありません。病状によって適切な手術法が異なるため、術式の選択には肛門科専門医の受診が必要です。

 

まとめ

いかがでしたか?
時々の切れ痔か、長年切れ痔に悩んでいるのかで治療方法の選択は大きく変わります。
次回は切れ痔の予防方法について解説していきたいと思いますので、次回も是非ブログをチェックしてみてくださいね。

切れ痔は繰り返せば繰り返すほど、治療が難しくなります。
患者さんは肛門科の受診を恥ずかしいと思われるかもしれませんが、当院には肛門科で通院中の患者さんも多いですし、待合室にはその他の診療科目ので来院している患者さんも多いです。
つまり・・・誰が肛門科で待ってるかなんて周りの患者さんからしたら分からないのです!

痔は日本人の病気の中でも誰にでもできるポピュラーな病気です。
治療できるうちに治療行い、慢性化、悪化をしないように、最近切れ痔を繰り返す頻度が増えてきたな…など、変わったことがあれば早めに肛門科を受診してみましょう。