皆さん、こんにちは。横浜市胃腸科のららぽーと横浜クリニックです。
皆さんは「悪性リンパ腫」という言葉を聞いたことはありますか?
名前に悪性とついているのでガンのような悪いものであることはお判りいただけると思います。
今回は年々増加傾向にあると言われている悪性リンパ腫のなかでも、「消化器管の悪性リンパ腫」にスポットを当ててお話していきます。

 


悪性リンパ腫ってどんな病気?

人の体には細菌やウイルスなどの感染や異物から体を守っているリンパ系組織(体の免疫システム)があります。このリンパ組織を構成しているリンパ球がががん化した病気です。
年間10万人当たり10人程度の発生と報告されており、日本の成人では最も頻度の高い血液腫瘍です。
主に、リンパ節、脾臓及び扁桃腺などのリンパ組織・臓器に発生しますが、リンパ系組織は全身にあるため、悪性リンパ腫は全身全ての部位で発生する可能性があります
この病名だけでみると、とても悪い病気なのかと思うかもしれませんが、一般的に固定がん(肺がんや膵臓がん等)に比べるとずっと良い治療成績が得られており、適切な治療を受ければ治癒することも期待できる病気なのです。
では、悪性リンパ腫の原因と症状はどのようなものなのでしょうか。

 

悪性リンパ腫の原因と症状

悪性リンパ腫になる原因は、実ははっきりと分かっていません。一部にはウイルス感染症(EBウイルス)、細菌(ピロリ菌)、自己免疫疾患(関節リウマチなど)が関係することや、免疫不全者に多いといわれています。
これらによって感染症や炎症があると、リンパ球が異常に増えてしまい、悪性リンパ腫になると考えられています

悪性リンパ腫の症状は、首やわきの下、足の付け根など、リンパ節が多いところにしこりが出現します。これらは初期症状としてとても見られることが多く、しこりのように腫れあがることが多くなるのが特徴です。
それ以外にも原因不明の発熱、体重減少、寝具の取り換えが必要な程のひどい寝汗、息苦しさ、皮膚の発疹、痛みなどの症状を伴うこともあります。

胃内のリンパ腫が大きくなると、腫瘤となり食物の通過を障害したり、出血を起こしたりすることがありるため、嘔吐、嘔気、吐血、黒色便といった症状が現れることがあります。
大腸内に主要を作って出血が起きたり腸管が詰まってしまうと腸閉塞などの症状を起こします。

悪性リンパ腫は血液のがんですが、様々な臓器に症状を起こすため、消化器科などの血液内科以外の診療科で診断されることも少なくありません。
悪性リンパ腫は30種類以上の病型(原因や症状などの違いによって分類したもの)があり、消化管に起こるのは以下のものです。

 

消化管に出来る悪性リンパ腫

消化管のなかでも、胃に発生するリンパ腫にはB細胞リンパ腫、MALT(マルト)リンパ腫があります。
小腸や大腸に発生するリンパ腫で最も多いものはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫ですが、若年層ではバーキットリンパ腫が多く発生します。
それぞれを詳しく解説していきましょう。

・B細胞リンパ腫

エイズや臓器移植後など免疫の働きが著しく低下した時に発生します。
このB細胞リンパ腫は低悪性度リンパ腫で、リンパ腫の中では進行度が遅いタイプの悪性度リンパ腫です。

・胃MALTリンパ腫

B細胞リンパ腫の1つで、これも進行度が遅いタイプの低悪性度のリンパ腫です。
消化管、唾液腺、甲状腺などの粘膜に関連するリンパ組織に発生します。ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)という細菌と関連しているといわれています。

・びまん性大細胞型B細胞リンパ腫

日本人に多い中悪性度のリンパ腫です。
診断された時点で治療する必要があり、小腸、大腸に発生するリンパ腫の中で最も多いリンパ腫です。

・バーキットリンパ腫

小腸や大腸に発生し、若年者に多く発生する高悪性度のリンパ腫です。
緊急入院が必要なぐらい急速な治療を要する腫瘍です。多くの患者さんで腹部に巨大腫瘤を伴います。

低悪性度<中悪性度<高悪性度と3段階の悪性度がありますが、どれも悪性であることに代わりはありませんからこわいですね。
この悪性リンパ腫の診断はどのように行われるのでしょうか。

 

悪性リンパ腫の診断と治療

悪性リンパ腫の診断には、腫れているリンパ節や腫瘤を取り出し、顕微鏡検査でみる必要があります。(病理診断)
小腸や大腸のような外から触れることのできない場所の場合は、内視鏡検査でも病理検査を行うことが出来ます。

粘膜内の早期がんはリンパ節(リンパの流れが集まる場所)への転移の可能性がないので内視鏡治療ができます。
ただ、粘膜下層(粘膜より深くまで進行している)がんは約10%にリンパ節転移が見られるため、医師の判断により手術か内視鏡で切除していきます。

大腸の早期がんの初回治療では約60%に内視鏡による治療が行われるようになりました。
手術に比べて患者さんの負担が軽減し、術後の生活の質も向上してきています。

 

まとめ

いかがでしたか?
悪性リンパ腫は全身どこにでもできる可能性のある病気です。消化管であれば胃、小腸、大腸それぞれに出来た場合で症状も変わってきますが、出血や腫瘤による通過障害など、共通した症状もありますね。
発熱や体重減少、寝汗といった悪性リンパ腫の病期の診断に当てはまる症状がある場合は早急に医療機関にかかりましょう。
若いから大丈夫、なんてことはありません。悪性リンパ腫は若年層から高齢者まで幅広い年代で発見されている病気です。症状を見落とさないように、普段から自分の健康チェックはしっかり行いましょうね。
定期的に内視鏡検査を受けて、早期発見を心がけていきましょう