こんにちは、横浜市胃腸科のららぽーと横浜クリニックです。
今回は胃カメラでの検査中に発見可能な「バレット食道」という病気についてご紹介します。
聞き慣れない方も多いかも知れませんが、バレット食道は決して珍しいものではありません。胃の内視鏡検査中にしばしば見付かります。
今回はこのバレット食道についてお話をしていきます。

 

バレット食道とは?

「バレット食道」は、その名の通り食道に発生する病気であり、別名で「円柱上皮化生(えんちゅうじょうひかせい)」とも呼ばれます。「バレット(Barrett)」という言葉自体は研究報告をした人物の名前に由来しています。
簡単に表現すると「食道下部の一部組織が変化し、胃と食道の繋ぎ目から口側にかけて、胃の粘膜のようになってしまう」という状態です。
本来は胃と食道の粘膜は違うものですから、食道側の粘膜が胃のように変化してしまう状態は通常の状態ではありません。
この通常とは違う状態になってしまった食道粘膜は「バレット粘膜」と呼ばれ、バレット粘膜を持つ人はつまり「バレット食道である」ということになります。

実は、バレット食道は明確に国際的な定義付けがされているわけではない(定義や分類がいくつか存在します)のですが、日本の診療ガイドラインでは「バレット粘膜(胃から連続性に食道に伸びる円柱上皮で、腸上皮化生の有無を問わない)の存在する食道」と表現されています。

バレット食道の分類

バレット食道は円柱上皮化の具合によって2つに分けることが可能です。
胃と食道の境界を越えた円柱上皮が3cm以上の場合にLSBE(ロングバレット食道)、3cm未満をSSBE(ショートバレット食道)とします。
胃から食道へ向かって、上へ上へと長く伸びる(Longな)バレット食道……つまりLSBEの方がより重症であると考えてください。
それぞれの割合としては、日本人では多くがSSBEであるとされ、LSBEは欧米人に良く見られると言われています。

ではどうして食道の粘膜が胃のように変化してしまうのでしょうか。

 

バレット食道の原因

バレット食道が発生してしまう原因は一つではありませんが、その最も有力な原因になるのが「逆流性食道炎(ぎゃくりゅうせいしょくどうえん)」です
この名前は聞いたことがある人も多いと思います。略称「逆食」。GERD(ガード)とも表現されます。
逆流性食道炎とは読んで字のごとく、胃酸などが食道や喉などの口側に逆流してしまう病気のことです。胸焼けなどの症状が伴いますが、症状のない人でも逆流性食道炎であるということがあります。
この逆流が日常的になると、胃酸が食道の粘膜を傷つけ、炎症の繰り返しによって徐々に食道の細胞が変化してしまいます。これがバレット食道の主な原因です。
細胞の変化によって、肉眼的にも色調変化や変形が判断出来ます。生検(細胞検査)による確定診断を待たずに内視鏡検査中にも分かります。

他の病気によって引き起こされるバレット食道ですが、バレット食道が他の病気を引き起こす可能性はあるのでしょうか。

 

バレット食道はガンの原因に?

食道の粘膜(扁平上皮:へんぺいじょうひ)と胃の粘膜(円柱上皮)は本来、別の組織です。これはそれぞれが違った役割をする器官ですから何となく分かると思います。
(正式には異なりますが)食道の粘膜が変化して胃粘膜のようになってしまうということは、本来はそこに「あるべきではない組織が存在してしまっている」ということになります。これによって様々な悪影響が出てしまうのです…。
バレット食道が悪化してしまった場合、バレット粘膜から潰瘍(かいよう)や癌(がん)になる可能性があります
研究報告によると、バレット食道になった人(バレット粘膜を有する人)は、正常な人と比較して食道癌のリスクが10倍も上がると言われています。
バレット食道は癌にも繋がる怖い病気であることが分かります。では、内視鏡検査でバレット食道が見つかった場合どのように治療していくのでしょうか。

 

バレット食道の治療法は?

意外に思われるかも知れませんが、残念ながら現在の医療では「バレット食道」自体に対する有力な治療法はありません
もちろん、いくつかの選択肢はあります。PPI(プロトンポンプ阻害薬)などの投薬治療や様々な手術による治療です。
しかしながら、どれも「バレット食道を治す」という観点では有力とは言えません。手術などによって改善したという人もいれば、変化しないという人や悪化したという人までいるからです…。

そこで、バレット食道に対する考え方としては、まずは「定期的に観察を行い、状態の変化が分かるようにしておく」ということが大切です。
有効なのは胃の内視鏡検査で、肉眼的な観察はもちろん、必要時に生検も可能です。

そして、バレット食道に対する明確な治療法はありませんが、バレット食道の原因となる逆流性食道炎などについては治療することが可能です。
これに関しては逆流防止手術などがありますが、手術までせず薬による治療でも十分に効果が望めます。
逆流性食道炎の治療によって症状を緩和し、バレット食道の悪化を(間接的に)食い止め、ひいては将来的な癌の予防へと繋がるわけです。

 

最後に

今回は「バレット食道」について簡単に説明しました。
バレット食道には直接的な治療法がありませんが、その主な原因となりうる「逆流性食道炎」に対しては薬などで治療することが可能です
ただし、バレット食道は決して油断せずに長い目で、そして定期的に様子を見ていくことが大切です。また胃の病気は進行が早いものもあり、その発見、診断のためにもバレット食道に限らず定期的に検査を受ける必要があります。
食道から胃、十二指腸にかけて最も効率的で有用な検査は上部内視鏡、つまり「胃カメラ」ですから、皆さん面倒がらずに検査を受けてくださいね

ららぽーと横浜クリニックでは鼻から行う胃カメラによって、口から入れる昔ながらの胃カメラよりもずっと簡単に検査を受けることが出来ます。
これまでにバレット食道の診断を受けてしまった方や胸焼けなどの自覚症状のある方、あるいは全く症状もなく今まで胃の検査を受けてこなかった方まで、ぜひ一度お気軽にお問い合わせくださいね。