みなさん、こんにちは。横浜市内科のららぽーと横浜クリニックです。

今回のテーマは「嚢胞」です。この漢字が読めますか?
これは「のうほう」と読みます。簡単に言うと体内に出来る袋状の体組織です。
今回は嚢胞がどんな病気で、どんな種類があるのか、お話ししていこうと思います。

 

嚢胞ってどんなもの?

嚢胞とは体内にできる袋状の病変(病気によって起こる体の変化)で、その中には液状の内容物が入っています。ほとんどの嚢胞はその内側が上皮によって覆われています。
ちなみに、内容物が固体の場合は嚢腫(のうしゅ)と言います。つまり、嚢胞は中に液体が溜ったものをさします。
大部分において害は無く放置しても問題はありませんが、面積が大きなものや周囲の臓器との癒着を伴うもの等は手術で摘出しなければいけない場合もあります。また、稀に癌化するものもあるので注意が必要です。
一口に嚢胞と言っても種類は様々であり、症状はバラバラです。
今回は嚢胞の中でも「類皮嚢胞」、「チョコレート嚢胞」、「多発性肝嚢胞」の症状や治療法についてお伝えしたいと思います。

 

嚢胞の種類

◆類皮嚢胞(るいひのうほう)

眼、鼻の周囲、耳の後ろなどの顔面のあたりにできやすい円形の良性腫瘍です。全身のどこにでも発生しますが、顔面以外では卵巣や腰椎での発生の報告もあります。顔面では眼窩(がんか)上外側の発生が最も多いとされています。
原因としては先天的なものであり、お母さんのお腹の中にいる時に皮膚が頭蓋内に迷い込んでしまってできるものです。
腫瘍の発育は殆どありませんが、徐々に外傷などを契機として大きくなったり、炎症を起こすこともあります。鑑別すべき疾患としては、類表皮腫、毛髪嚢腫、神経線維腫、石灰化上皮腫、粉瘤、奇形種などがあげられます。
唯一の治療方法は、「摘出手術」です。しかし、基本的に症状のないものは大きなものでも治療しません。摘出手術が推奨される場合は、若い患者さん(10代から30代くらい)で、完全摘出の可能性が高いと判断した場合は無症状でも手術で摘出することがお勧めされます。

 

◆チョコレート嚢胞

女性の方であれば特に「子宮内膜症」という病名は耳にしたことがあると思います。
実は、チョコレート嚢胞とは、卵巣の内部に発生する子宮内膜症で、正式には「卵巣チョコレート嚢胞」といいます。他にも「チョコレート嚢腫」や「子宮内膜症性嚢胞」と呼ばれることもあります。

卵巣の中に袋(嚢胞)ができ、その中に古くなった子宮内膜や月経血が溜まっていく病気です。卵巣内にできた子宮内膜は生理のたびに増え、卵巣内にたまります。
古くなると子宮内膜と血液は酸化して泥状に黒っぽくなり、溜まった内容物の見た目がチョコレートのようになることから「チョコレート嚢胞」という名前がつきました
治療方法は、患者さんの年齢や嚢胞のサイズ、妊娠を希望するかどうかによって、経過観察、薬物療法(ホルモン療法)、手術療法から選択することが出来ます。
年齢が上がるほど卵巣癌の合併率は高くなり、サイズが4cmを超えるとがんのリスクが高くなります。手術適応となる(手術をしても良いと判断されるライン)嚢胞のサイズは3~4cm、6cmを超える場合は手術を推奨しています。

 

◆多発性肝嚢胞(たはつせいかんのうほう)

多発性肝嚢胞とは肝臓に嚢胞が発生し嚢胞が大きくなることで腹部が膨れていく病気です
肝機能障害などの目立った症状がないため、腹部の膨らみが顕著にならない限り見つかりにくいのが特徴の一つに挙げられます。多発性肝嚢胞になるとお腹が通常より数倍大きくなるため「仰向けで寝ることが出来ない」、「普段着ている服が着れなくなる」など、日常生活に支障をきたすようになります。
多発性肝嚢胞になりやすい人は男女ともにいますが、中年女性に比較的多く発生し、20年~30年ほどかけて嚢胞が増殖し増大していきます。出産を経験した40代以上の女性に多くみられます

進行状態は、Ⅰ型、Ⅱ型、Ⅲ型と症状によって3つに分類することができます。
Ⅰ型は肝臓に発生した袋が少ないため、穿刺吸引という治療方法や、無水アルコール、オルダミンを用いた硬化療法があります。Ⅱ型は腹腔鏡(ふくくうきょう)によって袋の一部を切除し、溜った水を腹腔内に出し、腹腔から吸収させる開窓術や、肝臓を切除する手術を行っています。Ⅲ型は治療を行うことが出来ないため、肝臓移植を行います。ただし、腎不全を合併している可能性があるため、状況によっては肝腎同時移植を行ったりします。

 

◆乳腺嚢胞(にゅうせんのうほう)

乳腺嚢胞は、実はよく見られます。中には多数の嚢胞が繰り返しできる人もいますし、他の線維嚢胞性変化を伴う場合もあります。外傷が関係していることもありますが、はっきりした原因は分かっていません。
嚢胞の大きさは、ごく小さなものから数インチ程度(1インチは3cm)まで様々です。触ってみるとしこりのようなものがあるため乳癌かもしれないと不安になり、婦人科や乳腺外科に駆け込む方もいらっしゃいます。
症状として乳房痛の原因になることがあります。痛みを緩和するため、乳房に細い針を刺して中にたまった液体を抜き取ることがあります(吸引と呼ばれる)。その際に、以下のいずれかの場合にのみ、吸引した液体を顕微鏡で検査し癌がないかを調べます。
・液体に血が混じっている、または濁っている
・ほとんど液体が抜き取れない
・液体を抜き取った後もしこりが残る

これらがなければ、4~8週間後に再度受診します。このときに嚢胞が触知できなければ、良性と考えられます。また嚢胞ができていれば再度液体を抜き取り、顕微鏡で検査します。3回目に嚢胞がまたできている場合、または吸引してもなくならない場合は、生検(組織採取)を行います。ごくまれですが、乳がんが疑われる場合には嚢胞を切除する場合もあります。

 

最後にひとこと

今回、嚢胞という言葉を初めて聞いた人もいらっしゃるのではないでしょうか。
嚢胞と言っても症状は人によって様々で、できる場所も違ってきます
基本的には害がないため問題はありませんが、症状があるものや面積が大きなもの、周囲の臓器との癒着を伴うもの等は手術で摘出しなければいけない場合もあります。また、中には癌化するものもあるので注意が必要になってきます。
自分の身体に異変やいつもと違う点があったら我慢せずに病院を受診しましょう。当院でも診察できますので、お気軽にご相談ください。