こんにちは。横浜市胃腸科のららぽーと横浜クリニックです。
新年度、新生活が迫り外食の機会も増えてきたでしょうか。おいしい物はついつい食べ過ぎてしまいますよね。
ところで皆さん、しっかり体重の管理をしていますか?肥満は様々な病気の原因になります。
糖尿病、高血圧、心臓病、高尿酸血症などなど……まだまだたくさんありますが、ご存じの方も多いと思います。
では、「肥満と大腸癌(がん)は関係がある」ということはご存じでしょうか?大腸癌になる原因には様々な要素が考えられますが、実は肥満も一つの要因と言われているのです。そこで、今回は「肥満と大腸癌の関係性」についてお話しします。
まずは、大腸癌と肥満について簡単に解説していきましょう。

 

肥満とは?

そもそも「肥満」とは太っている状態のことで、疾病を意味するものではありません。肥満であるかどうかは体脂肪量(体脂肪の重さ)で決まります。
しかし、体脂肪量をはかる簡単な方法が無いため、指標としてBMI(Body Mass Index)という指標が世界的に広く用いられています
WHOによる判定基準では「BMI30以上が肥満」だと定義されていますが、不思議なことに日本ではBMI25以上が肥満とされています。これは日本肥満学会が定義した、日本独自の基準です。
なぜ数値が低く設定されているかというと、日本人はBMI25を超えたあたりから、脂質異常症、高血圧といった合併症の発症頻度が高くなるため、日本人に合わせて設定されているのです。

■BMIの計算方法

体重(㎏)÷{身長(m)×身長(m)}

例)身長155㎝、体重54㎏の人のBMIは…
  BMI=54÷(1.55×1.55)≒22

■日本での基準

 

肥満は疾患ではないと解説をしましたが、「肥満症」は疾患になります。
「それって一体、何が違うの?」と思いますよね?
肥満症は一言で言えば「病的な肥満」です。肥満に加えて、肥満によって悪影響がおきている糖尿病、高脂血症、高血圧や高尿酸血症、脂肪肝、関節症などの病気であること、また肥満のタイプが内臓脂肪型肥満である場合には、「肥満症」と判断されます。
医学的な病気として捉えられるため、ただ太っている状態の肥満とは違い治療や減量が必要です。

と、ここまでが肥満の解説です。では、次に当院関連ブログ記事ではすっかりお馴染みの「大腸癌」について解説をします。

 

大腸癌とは?

大腸癌は、長さ約2mの大腸(盲腸・結腸・直腸・肛門)に発生する癌で、日本人ではS状結腸と直腸にできやすいといわれています。
大腸癌は大腸粘膜の細胞から発生し、腺腫という良性のポリープの一部が癌化したものと、正常な粘膜から直接発生するものがあります。大腸癌は粘膜の表面から発生したあと、大腸の壁に次第に深く侵入していき、進行するにつれてリンパ節や肝臓、肺など別の臓器に転移します。
大腸癌患者は今後も増加すると予測されています。大腸癌は男女ともに40歳以降で増え始め、高齢になるほどリスクが高まります。進行すると、血便のほか、便秘や下痢をくり返すなどの症状も現れますが、その初期には自覚症状はほとんどありません。そのため「体質だろう」とか「たまたまだろう」などと思っているうちに癌が進行してしまうということも少なくありません。
大腸癌を防ぐためには定期的な大腸内視鏡検査で直接大腸を観察することが必要になります

どうでしょう?ここまで、肥満と大腸についてはご理解いただけたでしょうか。当院のブログではそれぞれについて詳しく解説をしている別の記事もありますので、気になった方はご覧ください。

では、ここからが本題です。大腸癌と肥満、全く関係がないように思えるこの2つには一体どんな関係があるのでしょうか。早速見ていきましょう!

 

肥満と大腸癌の関係性

近年の英国人524万人を対象にした追跡調査によると、22種類の癌のうち17種類の癌は「肥満であるほど増える」と報告されました。特に大腸癌、肝臓癌、胆嚢癌、膵臓癌、子宮癌、腎臓癌などは肥満の影響を受けやすいことが分かっています。
どうして肥満と大腸癌は関係しているのか、それは肥満を引き起こす原因と脂肪細胞から分泌されるホルモンが関係しているとされているからです

一体肥満の“何”が大腸癌に関係するの?

◆インスリンの過剰分泌

インスリンは肥満を引き起こす原因であり、血糖値を下げる役割があります。肥満になるとこのインスリンの働きが弱くなるためインスリンの必要な量が増えてしまいます。そうなると多くのインスリンが身体の中に出回ります。これを高インスリン血症といいます。
また、食べ過ぎや運動不足でも、体内に余った糖を処理するために大量のインスリンが分泌されます。
こうしたインスリンの過剰分泌が、癌細胞を増殖させる原因とされているのです。そのため、高インスリン血症という状態を引き起こす糖尿病患者は、欧米のデータでは大腸癌のリスクを43%も増加させたという報告があるのです

 

◆内臓脂肪型肥満

腹腔内の腸のまわりに脂肪が過剰に蓄積しているという肥満のタイプです。比較的男性に多くみられるタイプで、この内臓脂肪型肥満も大腸癌のリスクにつながるとされています。
分かりやすい目安としては、ウエストが2㎝増えると大腸癌のリスクが 4%増加すると言われているのです。
なぜ増加するかは複数の因子が関与するようですが、「レプチン」という脂肪細胞から分泌されるホルモンが関係しているとも言われています。血液中のレプチン濃度が上昇するほど大腸癌を罹った人の割合が増加する傾向があるのです。

肥満の人(上記した英国の研究ではBMIが30以上)は癌になりやすいことが分かっています。
しかし、ただ痩せていればいいというわけではなく、やせ過ぎも癌のリスクまることに繋がります。
健康に長生きしたい人は、男性はBMI21~27、女性は21~25の範囲に体重を維持しましょう

 

癌にならないためには肥満にならないこと!

日頃から、よく体を動かすことには「肥満解消」「免疫機能の増強」など多くの効果があります。
特に、最近注目されているのは「インスリン抵抗性」を改善することです。インスリン抵抗性とは肝臓や筋肉、脂肪細胞などでインスリンが正常に働かなくなった状態のことをいいます。この状態を改善するには、よく体を動かし、エネルギー源として糖を使用し続けることがとても重要で、日常生活で身体活動量が多い人ほど、癌が発生するリスクが低いことがわかっているのです。
普段あまり体を動かしていない人は、日常生活を活動的に過ごすことを意識しましょう。電車では座らないで立つ、掃除する場所を増やす、自宅の周りを散歩するなど、少しでも活動的に暮らすようしてみると効果的ですよ。

 

最後に

まさか大腸癌と肥満に関係性があるなんて考えてもみなかったことだと思います。正確には大腸癌に限った話ではなく、多種多様な癌のリスクが肥満の人に潜んでいると言って良いでしょう。
肥満が癌発症に影響することは以前から指摘されていましたが、糖尿病については最近の研究で分かってきました。肥満のない糖尿病であっても、あるいは少し太り気味かな?の段階であっても、癌の発症リスクは上昇してしまうのです……
太り気味の人、糖尿病を患っている人などは、食事や運動などの生活スタイルを改善し、健康な身体を手に入れましょう。目指すBMIは男性は21~27、女性は21~25ですよ。
また、大腸癌自体については、癌になってしまうその前に大腸内視鏡検査で大腸癌の元である大腸ポリープを切除してしまうことがとても大切です。

特に太り気味の方、糖尿病の方は定期的に検査を受けるようにしましょう。当院では苦痛のない大腸内視鏡検査を行っていますので、お気軽にご相談ください。