こんにちは。横浜市内科のららぽーと横浜クリニックです。
皆さんは「マイコプラズマ」という言葉を聞いたことがありますか?
咳が何日も続き、病院でお医者さんに「マイコプラズマ肺炎の疑いがあるので調べてみましょう」なんて言われたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
マイコプラズマって一体どんなものなのでしょう?今回はマイコプラズマがどのような特徴を持つ病原体で、どのように感染していくのかを紹介していきます。


マイコプラズマ感染症とは?

マイコプラズマという微生物によって、呼吸器を中心とした様々な症状が引き起こされますが、これらをひとくくりに「マイコプラズマ感染症」と呼びます
マイコプラズマは生物学的には細菌に分類されますが、他の細菌と異なり細胞壁を持たないので、顕微鏡で観察すると様々な形をしていることが分かります。年間を通じて感染する可能性のある菌ですが、特に秋から冬にかけて感染率が高くなることで知られています。
実はマイコプラズマに感染しても無症状であったり、ごく軽い症状であるために気が付かない(つまり感染者には問題がない)という場合もあり、必ずしもマイコプラズマに感染することが命の危機にまで繋がる問題になるとは言えないのです……が、このマイコプラズマ菌が引き起こすことで注意が必要な病気が、「マイコプラズマ肺炎」です。
正式名称は「マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)」と言いますが、通常「マイコプラズマ」と言った場合にはほぼイコールで、このマイコプラズマ肺炎のことを意味していると言っても過言ではありません。

ここからはマイコプラズマ肺炎についてお話ししていきましょう。

 

マイコプラズマ肺炎のどんな症状が現れる?

●主な症状……発熱、咳、頭痛、倦怠感
●その他の症状……声のかすれ、喉や胸の痛み、発疹、吐き気、腹痛、筋肉痛、関節痛など
※症状が重くなると中耳炎や鼻炎、無菌性髄膜炎、肝炎、脳炎など、様々な合併症を起こすことがあります。

症状は一般的な風邪と同じように発熱から始まり、咳が出始めますが、その咳がだんだん強まっていくという特徴があります。咳は初めのうち空咳ですが、徐々に痰がからむものになっていきます。
頭痛や全身の倦怠感、のどの痛みを伴うことも多く、初期の診断では上気道炎(いわゆる「風邪」)とされることも少なくありません。咳は3~4週間程度続くと言われています

 

マイコプラズマの感染経路は?

マイコプラズマの感染経路は「飛沫」によるものと「接触」によるものが挙げられます。

●飛沫感染

マイコプラズマに感染し肺炎になると、咳をするようになります。インフルエンザなどと同じように、感染者の咳やくしゃみによって飛び出したつば(唾液)に含まれるマイコプラズマ菌を吸い込むことにより感染します。
短期間での感染力はあまり強くありませんが、家族や友人など、長い時間一緒に過ごす人(特に近距離で)が感染した場合は注意が必要です。

●接触感染

マイコプラズマ感染者が手を触れたドアノブや電灯のスイッチなどに触れることによりマイコプラズマ菌が手に付着し、更にその手で口や鼻、目などに触れることで、その部位の粘膜からマイコプラズマが体内に入り、感染します。

 

感染しやすい年齢は?

マイコプラズマ肺炎は主に「子供のかかる病気」と言えます
成人未満の発症が圧倒的で、全体の8割程度を占めています。具体的には0〜4歳での発症が30〜45%、5〜9歳での発症が25〜35%前後となっています。
勿論、年齢を重ねてからマイコプラズマ肺炎になってしまう方もいらっしゃいますが、やはり傾向としては若ければ若いほどかかり易い病気であると言えるでしょう。

 

マイコプラズマの潜伏期間は?

マイコプラズマの潜伏期間は2~3週間程度と言われています
潜伏期とは体の中にマイコプラズマが侵入してから症状が出てくるまでの期間のことです。マイコプラズマ感染症の人と接触してもすぐに症状が出てくるのではなく、2~3週程度の間を置いて症状が出てくることが多いのです。

 

どんな検査をする?

●胸部レントゲン

胸部X線の陰影で、マイコプラズマ肺炎かどうかの予測がつきます。
しかしながら、中にはウィルス感染でも同じような像を呈することがあるほか、教科書通りの「すりガラスのような」特徴的な薄い影が現れずに、他の細菌性肺炎との区別が難しい場合もあります。

●採血

いくつかの項目をみることによって診断をすることができます。
白血球数は正常範囲に収まることが多いのですが、中には10000~15000程度の軽度の上昇を示すこともあります。CRP(炎症反応)は軽度上昇を示すことが多いですが、陰性のこともあります。
また、こちらは少し時間がかかりますが「ペア血清検査」という正確な方法もあります。症状が最も激しく出る「急性期」(発症初期)と、約2週間後の「回復期」の2回にわけて血液検査を行い、「抗体価」の上昇を診る方法です。
私たちヒトを含む動物は、ウィルスに感染すると血清中に抗体を作ります。2回の検査で抗体価が4倍以上に上昇していることが確認できれば、マイコプラズマ感染症であると確定診断できます。なお、マイコプラズマ抗体検査には、PA法とCF法という方法があります。

PA法:感染初期には血清中にIgM抗体という抗体が作られ、発症から1週間ほどで抗体が上昇し始めます。2~6週目に数値が最も高くなり、その後急速に消失します。
CF法:血清中にIgG抗体を測定します。発症から7~10日目頃に上昇し始め、数値が高い期間はIgM抗体より長く続きます。

PA法の方が急性期を捉えやすいとされています。ペア血清で4倍以上の抗体価の有意上昇を確認すればマイコプラズマ感染症と診断できます。ただし単一血清の場合でも、CF法が64倍以上、PA法が320倍以上あれば、肺炎マイコプラズマ初感染である可能性はきわめて高いと診断できます。

 

マイコプラズマ肺炎の治療方法

マイコプラズマ肺炎は抗菌薬による治療法が用いられます
比較的安心して使用されることの多い抗菌薬は、マクロライド系抗菌薬です。効果のある抗菌薬を3日程度使用すると、マイコプラズマは減少し、感染力は低下します。

●マクロライド系抗菌薬(エリスロシン、クラリシッド、クラリス、ジスロマックなど)
●テトラサイクリン系抗菌薬(ミノマイシンなど)
●キノロン系およびニューキノロン系抗菌薬(クラビットなど)

子供にはテトラサイクリン系やニューキノロン系の抗菌薬の効果があると言われています。8歳以下の子どもにテトラサイクリン系抗菌薬を2週間以上服用すると歯が黄色くなることや、骨の発達に影響するとも言われていますが、短期間で適切な投薬を行えば副作用は少なくて済みます。
ニューキノロン系抗菌薬は関節への影響があると言われていますが、最近では子供に安全なニューキノロン系抗菌薬も開発されています。

 

マイコプラズマ肺炎の感染後は?

マイコプラズマ肺炎は一度かかったからといって、再発しない病気ではありません。そして、完治するまでにはとても時間がかかります
一番の注意事項は「抗菌薬を医師の指示通り、最後まで飲む」ということです。また、水分もしっかりと摂取する必要があります。脱水状態になると痰が粘りやすくなるために排出しづらくなります。もし症状が悪化するようなことがあれば、再度病院に足を運ぶべきでしょう。
学校などの出席停止期間については特に定められておらず、熱が下がれば本人の意思で判断できますが、有効な抗菌薬を服用して症状が改善してくるのは概ね5日くらいと説明しています。

 

予防が大切!

マイコプラズマ肺炎にはワクチンがありませんので、感染しないためには予防が重要になります。特に流行時期には人混みを避けたり、マスクをすること、外出後は手洗いうがいをし、十分な睡眠や栄養を摂るなどの基本的なことが大切です。また、アルコールによる消毒なども効果があります。これらは他の病気の予防にも共通した話になりますね。それから勿論、タバコもだめですよ。


さて、今回お話ししたマイコプラズマ肺炎は一般的な風邪と症状が似ているため、感染に気付きにくい病気です。「風邪だから時間が経てば大丈夫だろう」と、自己判断による治療の遅れで重症化し、入院が必要になってしまうことも珍しくありません。
咳が続くなど、感染が疑われる症状があったら早めに病院を受診し、適切な検査や薬の処方をしてもらいましょう。当院でも対応可能ですよ。