こんにちは、横浜市内科のららぽーと横浜クリニックです。
みなさんは、子どものころに病院で粉薬をもらって飲みづらくて嫌だったという記憶はありませんか?なぜ飲みにくくて苦いのに、粉薬というものがあるのでしょうか?
錠剤もあるのに粉薬を処方されたことに疑問を持ったことがある方もいらっしゃると思いますが、それには理由があるのです。今日は、そんな「薬の形の種類や使い方」について詳しく解説したいと思います。

薬の形

薬にはいろいろな形がありますよね、この薬の形のことを「剤形」と言います。
同じ成分でも、用途に応じてさまざまな剤形があります。剤形が違うのは、必要なときに、必要な部位に、必要な量の薬を届け、その効力を十分に発揮させるためです。
医師が錠剤ではなく粉薬を処方した時には、理由があるのです。病気やケガの状態、年齢や体重、飲み合わせているお薬など、飲む人の年齢や症状に合わせて最も良いと考えられる種類のお薬を処方しています。
では、どんな薬があるのか見ていきましょう。

 

薬の分類

薬を大きく分類すると、「内用薬」、「注射薬」、「外用薬」の3つに分けられます。
剤形で分けると、錠剤、カプセル剤、散剤・顆粒剤(粉薬)、軟膏剤、坐剤、液剤・シロップ剤、注射剤など多数の種類があります。
薬の効果が現れるのが最も速い剤形は注射剤で、次いで吸入剤、舌下剤、液剤、散剤、錠剤の順になっていますが、個々の製品や成分によっても効果の現れる時間が多少違っています。
そもそも、飲み込んだくすりは体の中でどうなるのでしょうか。

 

服用した薬はどうなるの?

体の中に入った薬は腸で吸収されたあと、肝臓を経て体内を循環する血液に入ります。その後、血液の流れに乗って移動し、毛細血管を通り抜け各組識の細胞へ広がります。そして薬は肝臓を通過する時に分解されます。こうした薬の動きのうち吸収と分布は効き目の速さに関係し、代謝と排泄は効き目の持続時間に関係します。つまり、速く吸収分布されれば、効き目が速くなり、代謝と排泄が遅ければ、効き目が長持ちするのです。剤形は、すべてそうした作用を考えつくられています。
 

飲み薬の種類とカタチ

では、今度は内服薬(飲み薬)の種類について具体的に説明していきましょう。

◎錠剤

錠剤

粉を圧力によって一定の硬度に固めたものを「錠剤」といいます。錠剤には大まかに3種類あります。
糖衣錠…表面を糖でコーティングして飲みやすくした薬
腸溶剤…腸で溶ける薬
舌下錠…吸収を早めるために舌の下あるいは歯ぐきと頬の間に入れて溶かして服用する薬

メリット
・飲みやすい
・取り扱いや持ち歩きがしやすい
・比較的長期保管が可能
・用量がわかりやすい

また、薬に苦味やにおいがある場合には、それを隠すため表面にコーティングが施されていたり、錠剤が何層にも分かれていて、外側だけ胃で溶けて吸収され、中央の成分だけが腸で溶けて吸収されるというように段階的に溶けるなどの工夫がされたものもあります。
 

◎散剤(粉薬)

粉薬

「散剤」は一般的に粉薬と呼ばれている薬です。

メリット
・早く体内に吸収されるため早い効果が期待できる
・簡単に量が調整できるので体重や年齢に合わせた処方が可能
・2種類以上の散剤を混ぜ合わせ調剤することもできる

効き目がもたらされるまでの時間はカプセルや錠剤よりも圧倒的に速いため、風邪や痛みなどの症状をすぐに緩和したい場合は粉薬がいいといわれています。また、子どもやお年寄りなど、固形物を飲み込むことが難しい人にとっては、粉薬のほうが飲みやすいことが多いのです。ただし、人によっては、薬っぽいニオイや苦味を感じてしまうため嫌なイメージが強いかもしれませんね。
飲む時のポイントとしては、口の中に少し水を含んでおいてから飲むと飛散せず、むせずに飲むことができますよ。

ここで豆知識!
粉薬の一種である顆粒は、散剤の苦さを抑えたり、飲み込みやすいよう細かい粒状にコーティングしたものです。散剤のように飛び散らないので、扱いやすい剤形です。これらの利点から、医薬品のみならず、食品(調味料、インスタント食品等)、洗剤などに広く用いられています。
 

◎カプセル剤
 
カプセル薬カプセル剤は、ゼラチンで作られたカプセルに粉状・液状などの薬を詰めたり、カプセル皮膜で成型した製剤です。

メリット
・大きさの異なる顆粒や溶けやすさの異なる種類の薬を組み合わせることができる
・錠剤よりも吸収が速く飲みやすい
・熱に弱いものも薬にすることができる

デメリット
・過乾燥したり吸湿するとカプセルがもろく変形し、内容物が漏れることがある

カプセルを服用する際には、水を十分に取る必要があります。水なしで飲んだり水の量が不十分だと、カプセルが咽頭などに張り付き、その部分の粘膜を傷めてしまうことがあるからです。そうした場合、粘膜が高濃度の医薬品にさらされて潰瘍を生じたり、食道炎を起こすこともあります。とくに、胃の活動が弱くなったお年寄りの場合は、胃の中で薬が一ヶ所に固まることにより、胃潰瘍を起こすことがありますので注意が必要です。
色々形があると飲み方は決まっているのか、気になりますよね。
 

形と飲み方の関係

最近では、錠剤やカプセル剤は、つくる段階でさまざまな加工や工夫を施した薬も多くなっています。例えば、胃に刺激があり傷害を与えやすいものや、胃酸で分解する薬は、胃で溶けずに腸に入ってから溶けるよう工夫してあります。
また、急に吸収されると作用が強すぎる薬や長時間作用させたい薬の場合は、成分が少しずつ溶け出すように工夫しているものもあります。からだの中でゆっくりと溶けることで効果が長時間持続するように工夫されているのです。

錠剤やカプセル剤は、味の悪い薬や匂いの強い薬を飲みやすくするという利点があります。ですから、飲みにくいからといって錠剤を砕いたりカプセルを割って服用してしまうと、こうした工夫が台無しになってしまいますので、処方された薬は形状を変えずにそのまま服用しましょう。
また、薬を水で飲むのは薬を飲みやすくするためだと思っている人が多いようです。しかし、水の効用はそれだけではありません。水と一緒に薬を飲むことで、薬は胃の中で水に溶け、吸収されやすい形になります。錠剤やカプセル剤を、水なしでゴクリと飲み込む人がいますが、こうした飲み方をすると、胃の中で薬は溶けにくく、薬の効き目も遅くなったり、低下したりします。

つまり水は、薬を飲みやすくするためではなく、効き目を発揮しやすくするために飲むのです。薬は、水に溶けてから効き目を発揮するまでの時間を想定して作られていますので、コップ1杯(約200cc)の水かぬるま湯で飲むようにしましょう。特に抗生物質や解熱鎮痛剤などは、多めの水で飲むことで胃の保護にもなりますよ。

 

まとめ

すべての薬の種類や形には目的と意味があります。
錠剤は錠剤のまま、カプセル剤はカプセルのまま飲むことが、それぞれの正しい使い方です。そうすることで初めて、薬が安全かつ有効に作用するのです。薬によっては、早く腸まで届けたいから空腹時に飲むべきというものもあれば、ゆっくり届けたいから食後に飲むべきというものもあります。
また、空腹時に飲むと、胃の粘膜を荒らすなど胃腸の不調を招いてしまうという理由から食後に飲むべき薬、食べ物が薬の吸収や効果に影響しやすいから空腹時に飲むべき薬もあります。
錠剤やカプセルは、味や臭いが悪く刺激性のある薬を飲みやすくするために用いられています。医師の指示を守らず、錠剤やカプセル剤が服用しにくいからと自分勝手に服用を中止すると、目的とする効果が出なかったり、思わぬ副作用が出やすくなったりして満足な薬の効果が得られなくなってしまいます。

医薬品によっては、錠剤、カプセル剤の他に同一成分で、散薬やシロップ剤あるいは坐剤など種々な形をもつ薬もありますので、処方を他の剤形に変えられる場合もあります。飲みにくいからといって勝手に服用を中止したりせず、医師や薬剤師に遠慮なく相談してくださいね。