こんにちは。寒い日が続きますが如何お過ごしでしょうか。
今回の内容はズバリ「虫刺され」です。意外に、春から秋にかけて「虫刺され」で来院される患者さんは多いんですよ。
◆虫刺されの原因になるのはどんな虫?
皮膚に症状の出る虫は3タイプあり、その種類は多数います。代表的な物をいくつか挙げてみましょう。
【吸血する虫】…蚊、ダニ、ノミ、ブヨ、アブなど
【噛む虫】…蜘蛛、ムカデなど
【刺す虫】…蜂、毛虫など
どうですか?どの虫も名前は聞いたことのあるような身近な虫ですよね。
この私たちの周りに潜んでいる虫に攻撃されるとどんな症状が出るのでしょうか?
◆虫刺されの主な症状
虫に刺されると、その場所から特有の毒成分や唾液に含まれる成分が私たちの皮膚に注入されます。これによって、良く見る赤い発疹、かゆみ、痛みなどの、炎症症状が起こります。
つまり虫刺されとは、これらの物質によって生じるアレルギー反応ということになります。
◆虫刺されにも種類がある?
上で説明した虫の持つ物質によって生じるアレルギー反応ですが、この虫刺されにおけるアレルギー反応は大きく分けて2種類あります。
【即時型反応】アレルギーを引き起こす物質に接してすぐに起こるものです。
【遅延型反応】ある程度時間がたってから起こるもので、アレルギー反応が出るまでの症状は個人差にもよりますが、だいたい刺されてから2~3日後に反応するものが多いようです。
虫によってもどちらかのタイプに分類されるもの、場合によってどちらかが表れるもの、種類や刺される人の歳など条件によってどちらかが表れるもの、など…この反応の違いによって対処法や治療法が変わってくるんですよ。即時型と遅延型は人によってアレルギー反応が変化する場合もありますが、刺されやすさは人によって変わるのかを次に見ていきましょう。
◆どんな人が刺されやすい?
ここでは虫のタイプ別にお話していきましょう。
【吸血する虫】
噛む虫、刺す虫と比べて刺されやすい人、刺されにくい人が出てくるのは吸血する虫の場合です。
「吸血する虫」は人間の呼吸により、発生する二酸化炭素の濃度や体温を感知します。
つまり、言い方を変えると新陳代謝が激しい人、激しい運動後やアルコール摂取したあとなど、体温があがり呼吸も激しくなっている人は「刺されやすい人」と言えるでしょう。また、黒い服を着ていると熱を吸収し、体が熱を帯びるので熱を感知し寄ってきます。これを更に女性に限定すると、妊娠中も新陳代謝があがり、呼気に含まれる二酸化炭素の濃度が上がるので虫刺されの原因となります。また、女性の化粧や香水、クリームなど、化粧品に含まれる化学成分も引き寄せる要因となります。つまり、熱を感知されやすい状況だと吸血する虫には刺されやすいようです
【噛む虫】、【刺す虫】
これらの虫は自ら刺そうとすることはありません。なぜなら、虫が危険を感じて正当防衛として刺そうとしたり、毛虫のようにたまたま触れて刺されたという場合がほとんどだからです。そのため、これらの虫に関しては「刺されやすい」という人はあまりいないんですよ。
この話を聞くと吸血する虫を寄せ付けなくすれば虫刺されになる可能性は低そうですよね。それでもうっかり刺されてしまった時には、どう対処していく事が必要なのでしょうか?
◆虫に刺されたらどうする?
代表的な虫ごとに対処方を紹介していきます。
■吸血する虫
【蚊‐即時型反応・遅延型反応】
まずは、患部を流水で洗い清潔にし、虫刺され用の薬を塗る。掻きむしらないように傷口の保護をするとよいでしょう。傷口を掻きむしってしまうと、「とびひ」「結節性痒疹」といった別の皮膚疾患を引き起こす可能性があるので、注意しましょう。
蚊は年齢によって即時型と遅延型の反応が変化すると言われています。
【ダニ‐即時型反応】
吸血しているダニを見つけたら、指で触れずに病院へ行くのが良いでしょう。ダニは皮膚に強く噛みついて血を吸うため、無理に剥がしたり潰したりすると頭部が傷口に残ってしまいます。それが傷を悪化させる原因となりますので、そのまま病院へ行きましょう。
ダニに噛まれた傷口は、小さな刺し跡が2箇所連なるのが特徴なので見つけやすいです。発心や痒みが出ている場合は薬を塗り、掻きむしらないように保護をすると良いでしょう。
【ブヨ‐遅延性反応】
ブヨは蚊と違って皮膚を噛み切って吸血をします。そのため、ブヨに刺されたときは痛みを伴うことがありますが。ただ、遅延型のため、すぐに腫れてこなく気のせいだと見逃しがちです。数日経った頃に、強い痛みと大きな腫れの症状が出てきます。このタイミングで傷が新鮮な状態であれば傷口を大人の爪でつまみ絞り出すことが対処法として一番効果的です。蚊よりも強い炎症を起こしますから、ブヨの場合はステロイド外用薬を使うことが効果的です。これでも症状が続く場合は皮膚科を受診しましょう。
■噛む虫
【ムカデ‐遅延性反応】
ムカデに噛まれると激痛が走り、しびれが生じます。遅延型反応のため、だんだん赤く腫れたり発熱を起こすこともあります。ムカデの毒は熱に弱いので噛まれてすぐであれば、熱湯で対処が出来る場合があります。43度以上のお湯で、患部を20分温めると腫れは防げると言われています。噛まれてから時間が経ってしまうと熱湯による対処は出来ないので、炎症を抑えるために幹部を冷やした方がよいでしょう。
ただ、ムカデに噛まれるとアナフィラキシーショックを起こす恐れがありますから、過去にもムカデに噛まれたことのある方は皮膚科も受診しましょう。
■刺す虫
【蜂‐即時型反応・遅延型反応】
針を抜きます。お尻にある毒針を使って人を刺します。普通の蜂は毒針を使い何度も刺してきますが、ミツバチは相手を指すと毒針が抜けてしまいます。その毒針を指でつまんで引き抜くのは、毒の詰まった袋が針の根本についているため、指でつまむと毒液が体の中に流れ込んでしまい危険です。毛抜きやピンセットで取り除くか、クレジットカードなどの硬いカードで払うようにして取るとしかりと安全に抜くことが出来ます。
毒を指で絞り出し、患部を流水でよく洗います。ここまでは応急処置です。蜂は毒性が強いですので、念のため、皮膚科を受診しておいた方がよいでしょう。
1回目は即時型反応、2回目以降は遅延型反応です。2回目以降はアナフィラキシーショックを起こす場合もありますので、注意が必要です。
【毛虫‐即時型反応・遅延型反応】
ガムテープなどで指に触れない様にして毛を取り除きます。粘着テープで毛を取り除いても毒のある毛がまだ皮膚に残っている可能性もありますから、必ず流水で洗いましょう。流水で洗えば幹部が冷えて炎症を抑える効果もあります。
毛虫はその種類によって即時型・遅延型の反応が変わります。
どうでしたか?正しい対処法は覚えておいて損はないと思いますので、是非覚えておきましょう。ただし、対処法だけでなく治療が必要な場合もあります。
◆虫刺されの治療は?
症状が悪化した場合や、軽いものでも清潔にした後の患部に塗布する事で回復が速くなることがあるため、外用薬などを処方されることがあります。虫刺されに使われる塗り薬としては、かゆみを鎮めるための抗ヒスタミン成分を配合した外用薬(抗ヒスタミン薬)と、炎症を抑えるステロイド外用薬が代表的です。これら二つを虫刺されの症状によって使い分けます。
【抗ヒスタミン外用薬】
ヒスタミンという体内物質の活動を抑えることでかゆみを鎮める薬で、その外用薬を抗ヒスタミン外用薬といいます。
蚊の即時型反応で症状が軽い場合は、まずは市販の外用抗ヒスタミン製剤で様子をみるのがよいでしょう。
外用抗ヒスタミン製剤は、かゆみを軽減させることはできますが、かゆみの根本原因である炎症を抑える働きはありません。
炎症が悪化し、掻き壊すことによってさらに炎症が悪化し、子供の場合はとびひなどの細菌感染や、水イボなどのウイルス感染を引き起こすおそれがあります。
炎症が悪化した場合は外用薬の変更や追加が必要な場合もありますので、医師に相談をしましょう。
【ステロイド外用薬】
蚊と同じ即時型反応でも蜂や毛虫の場合や、遅延型反応の虫刺されでは、できるだけ早くステロイド外用薬を使って炎症を抑えることをお勧めします。
子供の虫刺されにステロイド外用薬を使いたいという場合は、年齢と症状を伝えて医師や薬剤師に相談すると安心でしょう。
このように、虫刺されでも症状が強い場合は内服薬の抗ヒスタミン薬やステロイド薬による治療が必要なこともあります。腫れがひどい時や、全身に熱が出た時は早めに病院を受診しましょう。
◆最後に…
虫刺されは、夏場の皮膚科診療でははメジャーな疾患です。
夏はレジャーシーズンであり、アウトドアが増えると思います。すると虫との出会い?も珍しくないと思います。同じ「虫刺され」の症状でも、吸血する虫、噛む虫、刺す虫とタイプによって対処法や治療薬が違うのだと言う事を覚えておくと良いでしょう。
たかが虫刺されとあなどることなく、早めに炎症の治療を行うことが大切です。
抗炎症作用にすぐれたステロイド外用剤は、使用法を守れば安心して使える薬ですので医師に相談してくださいね。